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米労働市場の「軟着陸」は実現するか(NY特急便)

日経新聞より引用

29日の米株式市場でダウ工業株30種平均は3日続伸し、前日比292ドル(0.8%)高で終えた。ハイテク株中心のナスダック総合株価指数は1.7%上昇した。8月に上昇基調をたどった米国債利回りがこの日は幅広い年限で低下(価格は上昇)し、株式相場を押し上げた。

金利低下の引き金となったのは午前中に発表された7月の米雇用動態調査(JOLTS)だ。米労働市場の過熱が和らぐ傾向が続いているのを確認し「米連邦準備理事会(FRB)の利上げが(7月を最後に)終着点を迎えたという見立てを支持する内容だ」(調査会社オックスフォード・エコノミクス)との声があがった。

具体的に労働需給の緩和はどのように進んでいるのか。企業側の労働需要を示す求人件数は882万件と3カ月続けて前月比で減り、市場予想(約950万件)も大幅に下回った。物価が急上昇を始める直前の2021年3月以来2年4カ月ぶりの低水準だ。

自発的な離職者が354万人と2カ月連続で減少し、2年5カ月ぶりの低水準だったのも目を引いた。より高い賃金を求めて転職する動きが鈍っていることを映す。

アトランタ連銀の調べる賃金の伸び率(12カ月移動平均)をみても、昨年12月時点で転職者は7.7%と同じ職にとどまる人より2.2ポイント高かった。今年7月にその差は1.5ポイントまで縮んだ。

今週末には8月の雇用統計の発表も控える。市場は就業者数の増加ペースが7月から一段と減速する半面、失業率は横ばいの3.5%にとどまると見込む。雇用を大きく損なうことなく賃金上昇を抑え、インフレ退治を達成するという「軟着陸シナリオ」への期待がにわかに膨らむ。

もっとも足元では労働市場の供給側で気になる動きもある。

「亡命希望者の人道的危機を憂慮する」。28日、JPモルガン・チェースのジェイミー・ダイモン最高経営責任者(CEO)やブラックロックのラリー・フィンクCEOらニューヨーク市を中心に活動する大企業の経営トップが、連名でバイデン大統領や米連邦議会の指導部宛てに公開書簡を送った。

同市では中南米などからやってきた移民が急増している。JPモルガンが市中心部に構える本社に近接するホテルなど、移民の一時的な滞在用に指定された施設(シェルター)がパンクして周辺に路上生活者があふれる事態になった。地元行政や企業側は連邦レベルの支援の拡充を求めているが、対応は遅々として進まない。

新型コロナウイルス禍のさなかに止まっていた移民の流入再開は、労働需給の逼迫を和らげる大きな要因となってきた。FRBのパウエル議長も先週のジャクソンホール会議の講演で、労働供給が増えた一因に移民の拡大を挙げた。

だが政治的な争点になりやすい移民の受け入れ問題は、来年の米大統領選を控えてますますセンシティブなテーマになる。最近のニューヨーク市の混乱ぶりは「移民増→労働需給緩和→賃金上昇鈍化」の構図がどこまで続くかに疑問を投げかける。

米金利先物市場は現在、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)での利上げ見送り確率を9割弱と見込む。ただ11月の次々回会合までの利上げ予想はなお5割近い。

パウエル氏は高成長の持続か、労働需給緩和の停滞を確認すれば追加利上げに動く構えをみせている。こうした懸念は杞憂(きゆう)に終わるのか。株式相場も経済データの確認を続けながら値固めをする展開になりそうだ。

(ニューヨーク=斉藤雄太)

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