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来週の日銀会合、焦点は「正常化サイン」示すかどうか

日経新聞より引用

日銀は22〜23日に金融政策決定会合を開く。春季労使交渉(春闘)に向けて賃上げの機運は高まりつつあるが、具体的な賃上げ幅はなお不透明だ。賃金と物価のバランスのとれた上昇が実現するかまだ見極める必要があるため、市場では大規模緩和の維持を決める公算が大きいとの予想が大勢だ。植田和男総裁が2%の「物価安定の目標」の持続的・安定的な達成への距離感についての説明などを通じて、政策正常化のサインを示すかどうかが焦点になる。

賃上げと物価上昇の循環見極め

原材料価格などコスト増の転嫁を起点とする物価高は明確に鈍化している。19日発表の2023年12月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除く総合が前年同月比2.3%上昇と23年11月(同2.5%上昇)から伸びが鈍った。今後は賃金上昇と賃上げ分の販売価格への転嫁という循環が起こるかが重要な局面といえる。

賃上げを見定める上で関心を集めたのは11日の支店長会議だ。日銀は賃金改定に関する会議での報告を、一部の大企業でベースアップ(ベア)を伴う賃上げ方針が表明されるもとで「地方でも昨年よりも幾分早いタイミングで賃上げ機運が醸成されつつある」とまとめた。日銀では労働需給の逼迫や良好な企業業績という環境のもと、今春も賃上げが実施される可能性は高いとの見方が共有されているとみられる。

もっとも支店長会議における報告では「賃上げの広がりや程度等については不確実性が高い」とも記すなど楽観的な内容ばかりではない。24年の春闘の第1回回答集計は3月中旬となる見通しで、1月会合で実際の賃上げ率を確認することはできない。

日銀内からは「満足できる賃上げ率か見極めてから(大規模緩和を正常化するかどうか)判断しても遅くない」との声が聞かれる。賃金・物価の好循環の実現に向けて順調に歩みを進めているとはいえ、物価上昇への政策対応が後手に回る「ビハインド・ザ・カーブ」に陥るリスクは乏しく「待つことのコスト」は限られるとの考えも引き続きある。

解除観測の後退「行き過ぎのように思える」

最大の関心事は好循環の実現に向けた確度について、植田総裁がどのような認識を示すかだろう。昨年12月のNHKのインタビューで植田総裁は「目指しているのは賃金と物価が好循環しつつ緩やかな2%くらいのインフレが持続していく姿」としたうえで「実現していくかどうかについては、まだもうひとつ自信が持てない」と語っていた。さらに1日には能登半島地震が発災した。

植田総裁の慎重な姿勢と災害の影響で、金融市場では日銀がマイナス金利政策を解除するとの織り込みは後退し、15日には2年債金利が一時マイナス0.005%と5カ月半ぶりにマイナス圏に沈んだ。翌日物金利スワップ(OIS)市場でも利上げ観測が一時期に比べて退潮し、「海外勢を中心に一部にはマイナス金利解除にすら踏み切らないのではないかとの思惑もある」(外資系運用会社のファンドマネジャー)という。

日銀は経済や物価情勢を巡る不確実性が極めて高いとして「企業の賃金・価格設定行動がどう変化していくか、確認していく必要がある」(植田総裁)とのメッセージをかねて発してきた。現時点では物価目標の持続的・安定的な実現に向けた確度が少しずつ高まるとのシナリオを変えるほどではなさそうで、日銀内には「(マイナス金利解除がないとの市場観測は)行き過ぎのように思える」との見方もある。植田総裁が記者会見で将来の正常化を示唆するような何らかの「サイン」を示すかどうかは注目だ。

今会合では「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」を公表する。原油先物価格は前回公表の23年10月末と比べ9%下落している。この影響で政策委員が見通す24年度のコアCPI(生鮮食品を除く総合)の上昇率の中央値は前回の2.8%から下方修正する公算が大きい。あくまで資源価格の下落を反映したもので目標達成への距離感は変わらないとの説明があれば、市場の正常化観測には大きく影響しない可能性が高い。

〔日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行〕

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