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中国、利下げでも短期金利上昇 資金逃避で需給逼迫か

日経新聞より引用

【北京=川手伊織】中国で短期国債の利回りが上がっている。中国人民銀行(中央銀行)が6月と8月に利下げしたが、期間が短い国債の利回りほど上昇幅が大きい。海外投資家による資金逃避や国内企業の資金繰り悪化で短期マネーの需給が逼迫しているとの見方がある。企業や家計の資金需要を刺激して景気を下支えする金融緩和の効果を弱めている。

人民銀行は6月と8月、事実上の政策金利と位置づける最優遇貸出金利(LPR、ローンプライムレート)を引き下げた。利下げは国債を含む多くの金融商品の利回りを押し下げることが多い。

中国の国債市場は足元で異なる動きを見せる。金融情報会社リフィニティブによると、20日の1年物国債利回りは2.22%だった。6月の利下げ直前と比べて0.31%上がった。代表的な長期国債である10年物など期間が長い国債の利回りは軒並み低下したが、期間5年以下では短いほど上昇幅が大きかった。

人民銀行は2020年2月と4月、新型コロナウイルスの感染拡大をうけ利下げを実施した。「ゼロコロナ」政策で景気の停滞が長引いた22年5月と8月もLPRを下げた。当時は短期国債を中心に利回りは低下した。

最近の短期金利が上昇したのは、資金需給が引き締まったためとの見方がある。第一生命経済研究所の西浜徹主席エコノミストは「外国人投資家を中心に資金の海外逃避が活発になり、短期マネーの流動性が逼迫した可能性がある」と分析する。

中国景気の不透明感が拭えず、対中投資に及び腰な海外投資家は少なくない。香港経由で中国の債券を売買できる「債券通(ボンドコネクト)」などを利用した外国人の元建て債券の保有残高は8月末で3兆1771億元(約64兆円)だった。1カ月で2%減り、ピークの22年1月末からは22%落ち込んだ。

収益改善が遅れる企業の資金繰り懸念も、短期金利を押し上げる要因となる。人民銀行がまとめた8月の企業向け新規融資をみると、手形割引と短期融資の合計は前年同月の2.1倍となった。

資金繰り懸念は強まっている。調査対象に民間企業が多い8月の長江商学院の景況調査をみると、「資金調達環境が厳しい」と答える企業の割合が上昇した。上海のロックダウン(都市封鎖)で経済が悪化した22年5月以来の水準だ。

丸紅中国の鈴木貴元経済研究総監は「8月は企業が在庫を積み増した。それに伴い、原材料費の支払いなど短期資金の調達が増えた」と語る。資金需給の逼迫という要因のほか「9月以降は追加利下げの観測が薄れて、短期金利が上がった」(伊藤忠総研の武田淳チーフエコノミスト)との見方もある。

短期金利が下がらなければ運転資金など企業の借り入れ負担を高め、金融緩和による需要刺激効果も弱めかねない。とはいえ、さらなる利下げで金利を下げようとすれば、外国為替市場で人民元の下落圧力が高まりやすい。元の先安観は中国からの資金流出を加速させる恐れもあり、人民銀行は難しい対応を迫られそうだ。

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