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中国財政赤字、最大の74兆円

今年15%増、3年ぶり前年超え 社会保障費の膨張続く

日経新聞より引用

【北京=川手伊織】中国政府は2023年に過去最大の財政赤字を計上する。少子高齢化で社会保障費の膨張が続き、赤字は3年ぶりに前年を上回る。地方財政は不動産関連の歳入が伸び悩むが、景気テコ入れへインフラ債の発行枠は過去最大に膨らむ。人口流出などで経済が停滞した地域では将来の破綻リスクが高まりかねない。

財政赤字は、中央と地方政府の一般会計に当たる「一般公共予算」の歳入不足を示す。23年は前年比15%増の3兆8800億元(約74兆円)と見積もる。財政の持続性をみるうえで重要な国内総生産(GDP)と比べた比率は3.0%となる。前年より0.2ポイント高まり、21年(3.1%)以来の水準となる。

歳入のうち、税収は11%増える。22年に景気対策で実施した増値税(付加価値税)の還付が終了したため、反動増となった。22年の剰余金といった「特別収入」は前年から2割減る。これらを合わせた歳入総額は3.5%伸びる。

一方で、歳出総額は5.0%拡大する。急速な少子高齢化や若年の就職難をうけて、社会保障・雇用分野が7.1%増える。5年前と比べると1.5倍近くに膨らみ、一般公共予算の歳出に占める割合は14.3%と、5年前と比べて約2ポイント上がる。

中央政府は地方の財政難を和らげるため、地方政府への移転支出を3.6%増やす。中央政府の歳入に占める比率は72.4%となる。22年(73.2%)をわずかに下回るが、長期的に上昇傾向にある。

地方政府が財政難から抜け出せないのは、依存してきた住宅市場の停滞が長引きそうだからだ。22年に前年比2割落ち込んだ不動産取得税(契税)は0.4%しか増えないと見積もる。

地方政府は徴税のほか、国有地の使用権を不動産開発企業に売却して土地収入を稼いできた。この収入が約9割を占める地方政府の特別会計に相当する「政府性基金」の歳入も0.4%の増加にとどまる。新築住宅の販売に回復の兆しが出てきても積み上がった在庫の圧縮に時間がかかると想定しているためだ。在庫が減らなければ、開発企業が新たな建設に向けて用地を確保する動きも鈍いままだ。

習近平(シー・ジンピン)指導部は景気をテコ入れするため、地方政府によるインフラ投資を拡大させる。資金を調達するために発行する専項債と呼ぶ関連債券は新規の発行枠が3兆8000億元となった。毎年3月に決める枠としては最大だ。

この債券は地方の政府性基金で管理する。新型コロナウイルスが流行した20年以降、毎年の新規発行枠は3兆元台後半で高止まりしている。22年末時点で発行残高は20兆6722億元となり、新型コロナ前の19年末時点の2.2倍に膨らんだ。債務残高が増えれば、利払い費もかさむ可能性が高い。

利払い費が増えると、予算が硬直化し社会保障や教育など市民に必要な経費を確保しにくくなる恐れがある。国務院(政府)は各地方政府の予算において、債券の利払い費が歳出の1割を超えた場合、財政再建計画を発動させるという基準を設けている。不動産経済の低迷で関連収入が伸びないなか、経済が疲弊した地方では財政破綻リスクが高まりかねない。

少子高齢化や地方財政難といった問題に対応するため、構造改革は不可欠だ。例えば、先進国は働き手の減少や年金不安を和らげるため法定退職年齢を引き上げてきた。李強(リー・チャン)首相は13日の記者会見で「真剣に検討し十分に論証を重ね、適時着実に実施する」と語ったが、具体策はなお見えない。土地や建物の所有に課税する不動産税(固定資産税)の議論も宙に浮いたままだ。

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