投資情報ななめ読み

現実味増す利上げ再加速(NY特急便)

NQNニューヨーク 川上純平

日経新聞より引用

24日の米株式市場でダウ工業株30種平均は前日比336ドル安の3万2816ドルと昨年12月以来の安値で終えた。物価指標の上振れで米国のインフレ圧力が依然強いことが確認された。米連邦準備理事会(FRB)が利上げ幅を0.5%に再拡大するとの筋書きが現実味を増しつつあり、市場で緊張感が高まっている。

株安を誘ったのは、この日発表された1月の米個人消費支出(PCE)物価指数だ。エネルギーと食品を除くコア指数の上昇率は前年同月比4.7%と前月(4.6%)より高く、市場予想も上回った。PCE物価指数はFRBが重視する指標として知られる。高インフレが継続している事実を投資家に改めて突き付け、FRBの利上げが続くとの見方が強まった。

FRBは前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げ幅を0.5%から0.25%に縮小した。市場では、PCE物価指数の上振れを受けてFRBが再び0.5%の利上げに動くとの警戒感がじわりと広がる。米金利先物の値動きから利上げ確率を算出する「フェドウオッチ」をみると、次回3月会合での0.5%利上げの確率は一時40%を上回った。1週間前の18%に比べ大幅に高い。

先週に一部のFRB高官が3月会合で0.5%利上げの選択肢を排除しない考えを示した際、市場はさほど真剣に受け止めなかった。ここにきて、その可能性は本格的に相場に織り込まれ始めている。

FRBが昨年12月の会合で示した参加者の23年末の政策金利見通しは中央値で5.1%だったが、上振れる可能性が高まっている。市場では、現在4.5〜4.75%の政策金利について「6%に近づける必要があるとの見方が強まるかもしれない」(オアンダのエドワード・モヤ氏)との声があがる。

足元で堅調を保つ米経済が利上げの加速に耐えられるかは不透明だ。メディア大手のワーナー・ブラザース・ディスカバリーが23日に発表した四半期決算は売上高が市場予想を下回った。経営陣は決算説明会で「マクロ経済環境は非常に厳しい」との認識を示し「広告市場が弱まり続けた」と述べた。企業は経済の先行きを不安視し、広告出稿に慎重になっている。

調査会社リフィニティブによると、米主要企業の業績は23年4〜6月期に減収減益になる見通しだ。当面、企業業績を株式相場の押し上げ役として期待するのは難しくなる。

ダウ平均を構成する銘柄の値動きをみると、24日は航空機のボーイングや映画・娯楽のウォルト・ディズニーなど景気敏感株と消費関連株への売りが目立った。投資家が抱える景気不安を如実に映す。利上げによる金利高への懸念で相対的な割高感が意識されやすい高PER(株価収益率)のハイテク株も安く、ソフトウエアのマイクロソフトやスマートフォンのアップルが下げた。

こうした銘柄は今年に入って大きく上昇し、ダウ平均の値動きを支えてきた。その分、調整の余地は大きい。今後発表される雇用指標などを受けて利上げの加速を織り込む動きがさらに広がれば、株式相場は下値模索の展開を強いられそうだ。

(NQNニューヨーク=川上純平)

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