1)日銀の国債買い占めの一角が崩れ始めた。
2)市場から吸い上げた国債を、再び市場に放出せざるを得なくなっている。
3)買い占めによる取引の枯渇、価格のゆがみなど、
副作用を無視できなくなったためだ。
4)政策の持続性は低いとみた海外投資家は国債売りを続ける。
5)黒田東彦総裁の後を継ぐ新総裁が誕生する今春に向け、
売りがさらに膨らむ可能性がある。
6)「海外勢が売り持ちしていた国債を買い戻す動きは鈍い」。
7)外資系証券の関係者は明かす。
8)政府が雨宮正佳副総裁に新総裁就任を打診したと伝わった後も、
国債を売ったままにしている投資家が多いという。
9)背景の一つに、日銀の国債買い入れにほころびが見え始めたことがある。
10)先週2日、日銀のある発表が債券市場で話題になった。
11)月31日時点の7年債の保有残高が、1月20日時点から8033億円も減った。
12)発行残高に対する日銀の保有比率は115%から103%に下がった。
13)日銀が市場から買い取った7年債を市場に戻したとみられ、
足元では100%を割り込んだ可能性もある。
14)日銀は保有する国債を証券会社などに貸し出している。
15)証券会社は借りた国債を期限までに日銀に返す。
16)外的に市場の流動性向上が見込まれる場合などは、
少額のコストを負担すれば借りた国債を返さなくていい。
17)日銀はこの例外措置を適用したか明らかにしていないが、
市場はほぼ確実だとみる。
18)日銀が保有額を減らした7年債は設計上、
長期国債先物の値動きと最も連動しやすい。
19)7年債の価格が先物と比べて割高になると、7年債を売り、
割安な先物を買う裁定取引が生まれ、
7年債と先物の値動きが結果的に一致しやすくなる。
20)ところが7年債の流通が細ったためこの取引が難しくなり、7年債が先物に比べ割高な状態が続いた。新発10年物国債など7年以外の年限も、値動きの方向性などは通常、先物と連動する。先物価格は理論から乖離(かいり)し、現物債全体と先物の連動性が薄れていた。
21)この弊害が国債入札に表れた。
22)先物をヘッジの道具として使うことが難しくなり、
証券会社は応札に及び腰になった。
23)10年債入札では最高落札利回りが日銀の長期金利の上限に達するか、
それに近い水準になることが昨秋から続いた。
24)流通市場でも利回りに上昇圧力がかかり、
日銀の国債購入額は1月に過去最大になった。
25)日銀が7年債を市場に戻すと、先物の機能は一定程度回復する。同時に海外投資家などは先物を売りやすくなる。先物の売り方が、決済日に受け渡す7年債を調達しやすくなるためだ。先物が売られると、現物債全体に価格下落(利回り上昇)圧力が強まる。
26)7日の債券市場では長期金利が0.495%まで上昇し、
日銀が上限とする0.5%に迫った。
27)誰が新総裁になっても日銀は政策修正に取り組む可能性が
高いとみられている」