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日本国債売り、止まらぬ海外勢 日銀次期総裁に試練

日経新聞より引用

海外投資家による日本国債売りが止まらない。1月の売越額は過去最大だった。足元でも金利は上昇しており、植田和男氏が日銀総裁就任後に金融緩和縮小に動くとみる海外勢が国債売りを続けている。植田氏は24日に衆院で所信聴取に臨む。国債売りを続ける市場とどう向き合うか。就任前から試練に直面する。

日本証券業協会によると、海外勢は1月に国債(短期国債を除く)を4兆1190億円売り越した。これまで最多だった昨年9月を2200億円ほど上回った。

日銀は昨年12月、長短金利操作を修正し、長期金利の上限を0.5%に引き上げた。海外勢は日銀が1月も長期金利の上限を再び引き上げるなどと考え、国債を借りてきて売る「空売り」を増やした。空売りは利回りが上昇(価格が下落)したところで買い戻すと利益になる。

日銀は1月の会合で上限金利を見直さなかったが、2月に入っても市場の金利の上昇圧力は消えていない。

長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りは20日、日銀が上限とする0.5%を付けた。0.5%を付けるのは10日以降、7営業日連続となる。10日は政府が植田氏を新総裁に起用する方針が市場に伝わった。長期金利はその後、日銀の上限で推移し国債売りが続いている様子が浮かぶ。

海外勢は、植田氏の過去の主張や、経済学者という経歴に着目して国債売りを続けている。

植田氏は22年7月の日本経済新聞の「経済教室」で「長期化した異例の金融緩和枠組みの今後については、どこかで真剣な検討が必要」などと主張した。米ブリークリー・アドバイザリー・グループのピーター・ブックバー氏はこれらの発言に着目し、「日銀は長期金利の上限を再び拡大し、23年中にはマイナス金利政策からも脱却する」とみる。

米ニューバーガー・バーマンのロバート・ディシュナー氏は「植田氏は経済学者なので、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を重視した金融政策を打ち出す」と予想する。日本の物価上昇率は41年ぶりの水準まで上昇し、賃上げの機運も高まる。インフレを抑えるために、金融緩和を縮小するのが理にかなうという考えだ。

植田氏は日銀の審議委員を7年間務めた。Syzグループ(スイス)のシャルル・アンリ・モンショ氏は実務家としての経験に注目し「急激な政策変更は好まず、現実的なスピードで緩和の修正に取り組む」と指摘する。政策を修正する時期を見極めようと、24日の所信聴取に注目する。

海外勢の国債売りの姿勢が変わらないと、日銀の国債買い入れが膨らんでしまう。日銀は27日から、証券会社などに国債を貸し出す時の料率を一部で従来の4倍に引き上げる。海外勢は証券会社から国債を借りた上で空売りをしており、このコストが上がることを意味する。

投資家が空売りでもうけることを難しくし、国債への売り圧力を和らげる狙いとみられている。半面「日銀の国債貸し出しが減り、国債の流通性が悪化する」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の鶴田啓介氏)という別の問題も懸念される。

植田氏が所信聴取で市場機能の悪化にどのような認識を示すかは焦点のひとつだ。市場機能に配慮する姿勢を示すと、政策修正観測が高まる可能性がある。植田氏は就任前から市場との緻密な対話が求められることになる。

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