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強弱まだらの米雇用、金融市場は安堵 利下げ判断に時間

【ニューヨーク=斉藤雄太】8日の米金融市場では、同日発表の2月の米雇用統計が労働市場の過熱感を示す内容ではなかったとの受け止めが広がった。米利下げが遠のくとの警戒感は薄れ、金利低下(債券高)や株高が進む場面もあった。ただ債券や株買いの一巡後は巻き戻しも生じ、市場は利下げの行方を見極めようとしている。

2月の雇用統計は、就業者数の前月比増加幅が27万5000人と市場予想の20万人を上回る一方、1月分の増加幅は速報時点の35万3000人から22万9000人に下方修正された。2月の失業率は3.9%と0.2ポイント上昇し、2年ぶりの高水準を記録。平均時給の伸びは鈍化した。米労働市場は強弱材料が混在しつつも、過熱感が徐々に和らいでいる。

1月の雇用統計は就業者数や時給が予想を大きく上回り、市場で米連邦準備理事会(FRB)の3月利下げ説がしぼんだ経緯がある。このため再度の上振れを警戒する向きもあったが「FRBがよりタカ派に傾くという懸念は薄れた」(運用会社クリアブリッジ・インベストメンツのジェフ・シュルツ氏)と市場は安堵した。

8日の米債券市場では、政策金利の動きに敏感な2年物国債利回りが一時4.41%程度と雇用統計の公表前から0.08%ほど低下し、1カ月ぶり低水準になった。米金利低下がドル売りを誘い、外国為替市場では対ドルの円相場が一時1ドル=146円台半ばと1カ月ぶりの円高・ドル安水準をつけた。

8日午前の米株式市場ではダウ工業株30種平均が前日比約180ドル(0.5%)高、ハイテク株中心のナスダック総合株価指数は1%超上昇する場面があった。

米コインデスクによると、暗号資産(仮想通貨)のビットコイン価格は米東部時間の8日午前に一段高になり、初の7万ドル台を付けた。金(ゴールド)価格の国際指標であるニューヨーク先物(中心限月)も一時、1トロイオンス2200ドルを突破して最高値を更新。様々な資産クラスでFRBの利下げを見越した取引がみられた。

もっとも、株式やビットコインは買いが一巡した後に伸び悩んだ。株高をけん引してきた半導体大手エヌビディア株に売りがかさみ、一時6%超下落したのが投資家心理を悪化させた。ダウ平均やナスダック指数も下げに転じ、8日終値はそれぞれ68ドル(0.2%)安と1.2%安だった。

米金利低下やドル安も一服し、8日のニューヨーク外為市場の円相場は1ドル=147円10銭程度で終えた。

雇用統計は市場の利下げ期待を遠ざける内容ではなかった半面、勢いづけるほど弱くもなかった。米金利先物市場の動きから政策金利の先行きを予想するフェドウオッチをみると、FRBが6月までに最初の利下げをする確率は7割程度で前日からほとんど変わっていない。

19〜20日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)を前に、FRBは9日から金融政策関連の対外発信を控えるブラックアウト期間に入る。今回の会合では政策金利の据え置き予想が大勢を占めるが、市場はFRBが今後の利下げシナリオをどのように示すのかに関心を寄せる。

FRB高官は、利下げを始める前にインフレの鈍化傾向が続くという自信を深めたいと口をそろえる。ただパウエル議長が7日の米議会上院での議会証言で、その時期が訪れるのは「そんなに遠くない」と述べた一方、ジェファーソン副議長らは利下げ開始は「今年後半が適切」と指摘し、市場も的を絞りきれずにいる。

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