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「隠れ円安」再び 円キャリー、対高金利通貨で活発に

日経新聞より引用

外国為替市場で円が米ドル以外の通貨に対して下落する「隠れ円安」が再び進んでいる。対カナダドルでは約16年ぶり、対メキシコペソでは約15年ぶりの安値圏で推移する。日銀が低金利政策を維持するとの観測が高まり、主要国で最も低金利の円を借りて高金利通貨で運用する「円キャリー取引」の拡大が背景にある。

20日の東京外国為替市場で円相場は1ドル=150円程度で推移した。対ドルは2023年11月に付けた1ドル=151円90銭台の安値にはまだ達していない。ところがドル以外の主要通貨に対する円相場をみると、昨年に付けた円安を続々と更新している。

対カナダドルでは16日に一時1カナダドル=111円台半ばと08年1月以来の円安・カナダドル高水準を付けた。英ポンドに対しても13日、約8年半ぶりに1ポンド=190円台に達する場面があった。

対メキシコペソでは16日に約15年ぶりの円安水準、ニュージーランド(NZ)ドルに対しても20日に約9年ぶりの安値圏に到達した。対ブラジルレアルでも年初から下落が続き、13日に一時昨年11月下旬以来の円安水準を付けた。

大和証券の多田出健太チーフ為替ストラテジストは「世界的な株高で、資源国通貨やリスク資産の価格に連動しやすい通貨に買いが集まっている」と指摘する。米国などで株式相場が高値を更新するなかで投資家心理が改善し、よりリスクをとって高いリターンを得ようとする動きが広がっている。

外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「円売りの相手に、金利先高観があったり、絶対的な金利差の大きかったりする通貨が選ばれている」と話す。

例えば、ニュージーランドには追加利上げ期待が残り、当面は低金利政策を続けるとみられる日本とは対照的だ。オーストラリア・ニュージーランド銀行はインフレの高止まりから、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が現在5.5%の政策金利を2月と4月に0.25%ずつ利上げするとの見方を示す。

メキシコ銀行(中央銀行)も政策金利は11.25%と高水準を維持している。足元では利下げ観測が広がりつつあるものの、依然として日本との金利差は大きい。

円安・高金利通貨高の背景には「円キャリー取引」の活発化がある。キャリー取引とは、市場から低金利の通貨を借り、高金利通貨を買って運用する手法だ。

世界で唯一マイナス金利政策を維持している日本の円は、キャリー取引の調達通貨に選ばれやすい。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「1月半ばごろから、新規の円売りポジションが構築されるようになった」と語る。

2月8日に日銀の内田真一副総裁がマイナス金利解除後も「緩和的な金融環境を維持していくことになる」と発言した。日銀がどんどん利上げしていく見込みは少ないとの考えが広がった。米連邦準備理事会(FRB)の大幅な利下げ期待の後退と相まって、市場の急激な円高に対する警戒感は薄れた。

キャリー取引で重要なのは、調達する通貨の予想変動率が安定している点だ。特に借りた通貨が高くなると、金利差で稼ぐ以上の損失を被るリスクがある。円・ドル相場の3カ月物の予想変動率は20日に年率で8%台前半と、23年11月下旬以来の低水準を付けた。予想変動率は市場で流通するオプション価格から算出する。

金利差に対して予想変動率が低下するとキャリー取引の魅力度は増す。日米の3カ月金利差を予想為替変動率で割った「キャリー・リスク比率」をみると、16日に0.6を上回り23年12月上旬以来の水準を回復した。対ドルでのキャリー取引の魅力度上昇は、基軸通貨のドルを介して取引することが多い他通貨に対しても波及しやすい。

23年の円安をもたらしたのもキャリー取引だった。11月中旬までは円相場が膠着感を強めるなかで円キャリー取引が拡大したことが、1ドル=151円台や1ユーロ=164円台まで円安が進む原動力の一つとなった。

昨年末にかけては米早期利下げ期待や日銀の金融政策修正に対する思惑が広がり、円相場は1ドル=140円台まで円高が進行した。円キャリーを通じた積極的な円売りは下火になった。予想為替変動率が再び低下するなか、改めて円売り持ち高を構築する動きが円相場を押し下げている。

24年はFRBの利下げなどを受けて「円高の年」を見込む声が多かった。だが最初の1カ月半は市場参加者の見通しに反して対ドルで10円の円安が進んだ。日米ともに金融政策の膠着状況が続けば、円への下落圧力が続く可能性が高そうだ。

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