次期日銀総裁候補の植田和男氏が24日、衆院で所信聴取と質疑に臨んだ。植田氏は「日銀が行っている金融政策は適切」とし、現状の金融緩和を続ける方針を示した。長短金利操作の将来的な修正については、具体的手法への言及を避けた。24日の市場は株高と円安で反応した。市場関係者に今後の相場の見通しを聞いた。
「株高効果長続きせず 6月末にかけて2万6500円に下落も」
UBS SuMi TRUSTウェルス・マネジメント最高投資責任者 青木大樹氏
「植田氏は足元の物価上昇は持続的ではなく、基調的に2%の物価上昇を達成する必要性を強調した。市場では金融緩和に積極的な『ハト派』との受け止めが広がり、株価の上昇につながった」
「もっとも株高の効果は一時的とみている。企業業績の悪化が意識されれば、6月末にかけて日経平均株価は2万6500円程度まで下落するリスクがあるだろう。銀行株は2週間前に有望な投資テーマから外した。銀行株は既に長短金利操作の撤廃までを織り込んだ水準まで上昇したと考えている」
「日米金利差拡大、円139円台も」
三菱UFJモルガン・スタンレー証券チーフ為替ストラテジスト 植野大作氏
「外国為替市場は基本的に円安・ドル高方向で反応した。植田氏が現状の金融緩和が適切で、これを継続するという方針を示したためだ。それと同時に日銀の国債買い入れの問題点などにも言及した。こうした問題点は市場では既に強く認識されているため、この発言などで円高方向に振れる可能性は低いとみている」
「足元では米インフレへの懸念が強まり、米連邦準備理事会(FRB)が利上げを続けるという市場予想が勢いを増した。日米金利差は当面は拡大方向に動きそうで、ドル高の圧力が強くなる。円相場は最大で1ドル=139円台まで下落する可能性がある。年末にかけては米利下げ期待が高まり、1ドル=129円程度の水準を予想している」
「4月以降、マイナス金利政策の解除の可能性」
みずほ証券チーフ債券ストラテジスト 丹治倫敦氏
「全般的に現在の日銀の政策に沿った発言が目立ち、無難な質疑だったように思う。2%の物価安定目標については当面維持する方針を示しており、これを(基調的に)達成するまでは金融緩和を急速に縮小する意思はないということは推認することができた」
「もっともこれは現状の政策を維持し続けることを意味するわけではない。日銀は昨年12月に長短金利操作の内容を修正しており、市場では金融緩和の修正への期待が残る。当面長期金利は0.4〜0.5%で推移し、日銀が上限とする0.5%を超えることもあるだろう。4月以降、マイナス金利政策の解除に踏み切る可能性もあると考えている」