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植田和男氏は円安容認派? 過去の発言にヒントはあるか

日経新聞より引用

外国為替市場で円相場に下落圧力がかかっている。24日には次期日銀総裁候補の植田和男氏が「現在日銀が行っている金融政策は適切」と述べたのをきっかけに、円は急速に売られる場面があった。米国で利上げが長期化するとの観測が強まるなかで、日銀の政策修正の思惑が後退するのは円安・ドル高につながりやすい。所信聴取では安全運転に徹した植田氏だが、過去には円安容認派と捉えられかねない発言が急速な円安を招いたこともある。

過去には「日本経済を下支え」「デフレ圧力和らげる」

24日の東京外為市場では、衆院で植田氏の所信聴取が始まった直後の9時半すぎに円相場は一時1ドル=134円93銭近辺まで急速に下落した。植田氏が改めて大規模緩和を続ける方針を示すなど「注目されていた政策修正の示唆に対しては慎重だった」(国内銀行の為替担当者)と受け止められたためだ。国内輸出企業の円買い・ドル売り観測で134円05銭近辺まで上昇した後、円相場はほどなく134円台後半に戻した。

過去を振り返ると、植田氏の発言をきっかけに急速な円安が進むこともあった。日本経済新聞の記事データベース「日経テレコン」で調べたところ、アジア通貨危機や日本の金融危機に揺れていた1998年4月27日、当時日銀の審議委員であった植田氏は外国通信社とのインタビューで「円が暴落した場合にアジア通貨に与える悪影響は懸念している」と説明。だが「こうした点を除けば円安は間違いなく日本経済を下支えするだろう」と述べたことで3円近くも円安・ドル高が進んだという。

さらに2001年3月5日付の日経新聞のインタビューでは、日本の景気見通しや物価下落圧力の強まりに対する懸念から日銀に金融緩和を求める声に対し、オペ(公開市場操作)運営を見直す必要性に言及。財政ファイナンスへの懸念から長期国債の購入増額には慎重な姿勢を示したうえで「(円売り介入などで)円安を促し、デフレ圧力を和らげる方が効果的ではないか」との考えを示していた。

もちろん、植田氏も日銀総裁として言質を取られないようにしている。24日の所信聴取では、為替水準や評価を巡って「一つ一つの円安・円高の局面において、それが様々な影響を経済に及ぼすことについては極めて注意深く見守っていかないといけない」と説明した。円安は輸出企業にとって収益面でプラスに働く一方、家計などへのマイナスの影響にも言及して良しあしへの明言を避けた。

国内インフレは鈍化の観測

市場機能の衰えが問題となるなど大規模な金融緩和策はいずれ修正を迫られると予測する市場参加者は多い。それでも植田氏が慎重な発言に徹したことについて、東海東京調査センターの柴田秀樹氏は「マイナス金利政策を解除すれば急激な円高進行など相場が大きく変動するため、できるだけ混乱させたくないのではないか」と分析する。急速な政策転換を望まず、ある程度の円安進行は許容する可能性がある。

日銀が即座に大規模緩和の正常化に動きづらいことも事実だ。日銀が1月に公表した「経済・物価情勢の展望(展望リポート)」では、物価上昇率の見通しは2023年度が1.6%、24年度が1.8%といずれも2%の物価目標には達しない。

24日発表された1月の全国消費者物価指数(CPI)は生鮮食品を除くベースで前年同月比4.2%上昇と41年4カ月ぶりの高い伸びとなった。しかし、来月発表される2月分からは政府による電気・都市ガス料金の負担軽減策の影響もあって伸びは3%台まで鈍ると予測するエコノミストは多い。

「近年の円安の背景として内外金利差が影響を及ぼしていたことは否定できない」。所信聴取でこう語った植田氏は、なかでも米金利上昇の影響が大きかったとの認識を示した。インフレ抑制に向けて米連邦準備理事会(FRB)が利上げの手を緩める気配がないなか、日銀が植田体制となっても「日米金利差拡大で円売り圧力が強まる」(第一生命経済研究所の藤代宏一氏)状況は続く公算は大きい。

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