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FRB「年内2回利上げ」に残る謎 見切った?金融リスク

日経新聞より引用

米連邦準備理事会(FRB)が14日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置いた一方、年内にあと2回の利上げに動く見通しを示した。直後の市場はハト派とタカ派が入り交じる不可解さを受け流した。だがFRBが本気なら放置し続けるわけにもいかない。「謎」を解くカギはどこにあるのか。

「利上げがまだ必要だというなら、なぜ今回やらないのか」「金利を据え置く状況で、なぜすぐに利上げを再開できると思うのか」。FOMCの結果が出た14日午後、米市場では疑問の声も上がった。

FOMCでは政策金利シナリオの上方修正とあわせ、2023年の経済成長率や失業率の見通しを改善させた。食品やエネルギーを除いた「コア」の個人消費支出(PCE)物価指数も上昇率予想を引き上げた。

「前回の会合で考えていたよりも、もっと抑制(的な政策)が必要」。しつこいインフレ圧力や労働市場の逼迫ぶりを踏まえ、パウエルFRB議長は記者会見でこう語った。

では、なぜこのタイミングで利上げの見送りなのか。パウエル氏の説明を要約すれば、次のようになる。

▼過去の金融引き締めの効果はこれから本格的に出てくる。米地銀の相次ぐ破綻で金融が動揺した余波で景気が下振れするリスクがある。

▼金利の最終到達点が近づくなか、焦点は利上げのスピードではなく、金利の水準と引き締めを続ける期間にある。利上げ減速のプロセスの一環として休止は自然なことだ。

もっともらしく聞こえるが、どこか釈然としない。

「タカ派とハト派が戦場で相まみえ、追加利上げがどの程度必要なのか、どのくらい力強く伝えるかでもめた」。モルガン・スタンレーのエレン・ゼントナー氏ら米国経済チームはリポートで今回のFOMCの内実をこう推し量った。

パウエル氏らハト派寄りの執行部が利上げ見送りで意見をまとめるため、先行きの金利シナリオではタカ派寄りの予想に寄り添って妥協した。たとえば、そんな「取引」があったのなら、まだ納得できる。

FOMC前にはFRB高官らに追加利上げを訴える声と休止を示唆する見方が交錯していた。フタを開けると全会一致で据え置きが決まり、金利見通しでは年内2回利上げの予想にメンバーの半数に当たる9人が集中した。これも傍証といえそうだ。

カギを握りそうなのが銀行不安の余波をどうみるかだ。パウエル氏は利上げ見送りの理由の1つに、金融情勢を見極める必要性を挙げた。年内2回利上げの予想を銀行問題の影響が軽微にすむ楽観シナリオだと捉えれば、「目先のハト派」と「少し先のタカ派」が両立しても不自然ではない。

実際、新しい政策金利の到達点である5.6%を巡り、パウエル氏は「3月上旬の銀行問題以前に政策金利(の先物)が取引されていた水準とかなり一致している。我々はそこに戻ってきたということだ」とも語っている。

金融安定に配慮しすぎると長期金利の低下を招き、肝心の金融引き締め効果がそがれてしまう。執行部にはそんな打算もあるのかもしれない。

信用環境の逼迫が「利上げ2回分(0.5%)に相当する金融引き締めの効果を生む」。銀行不安が浮上した3月ごろ、FRB高官らの一部で、こんな見方が広がっていた。

今回、政策金利の最終到達点の引き上げ幅が0.5%になったのも、ひょっとしたら偶然ではないかもしれない。銀行問題の余波が小さければ、FRBはインフレ鎮圧に集中できる代わりに、少なくとも0.5%分は通常の利上げを増やす必要が生じるからだ。

3、5月のFOMCではFRBスタッフが「銀行部門の情勢変化」を理由に今年後半に米国経済が緩やかな景気後退に入るとの見通しを示したことが議事要旨で明らかになっている。スタッフの説明に変化がないか。メンバー間でどんな議論が交わされたのか。今回のFOMCの議事要旨は注目だ。

もちろん金融リスクは軽視できない。現実になれば、追加利上げどころの話ではなくなる。それでもFRBが政策の軸足を金融の安定からインフレ鎮圧に戻す兆しを見いだせるのなら、謎の解明につながるかもしれない。

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