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長期金利、上限での攻防続く 消えぬYCC修正観測

植田氏所信には「安心感」も

日経新聞より引用

日銀総裁候補の植田和男氏は24日、衆院で所信聴取に臨み金融緩和を継続する考えを示した。2%の物価目標の実現には「時間を要する」とも述べ、投資家は「無難なスタート」と受け止めた。金融緩和の出口を早期に探る姿勢こそ示さなかったが、市場では長短金利操作(イールドカーブ・コントロール=YCC)の修正を巡る思惑は消えず、長期金利が日銀の許容する変動幅の上限である「0.5%程度」から大きく離れる状況は望みにくいようだ。

植田氏は所信聴取で「日銀が行っている金融政策は適切だ」とし、「金融緩和を継続して企業が賃上げできる環境を整える」と語った。消費者物価指数(CPI)の上昇率については「2023年度半ばにかけて2%を下回る水準に低下していく」と述べ、物価目標の早期達成には距離があると見通した。東海東京証券の佐野一彦氏は「植田氏は先々の政策についての言質を与えず、安心感のある所信聴取だった」と評価する。

祝日明け24日の国内債券市場では、植田氏が緩和継続を主張したことで先物を中心に買いの勢いが増した。前営業日比7銭高で寄り付いた債券先物の中心限月である3月物は、午後には35銭高の146円65銭まで上げ幅を拡大し、所信聴取を波乱なく終えたことで買い戻しが活発になった。しかし、市場では「日銀がいずれYCC修正に踏み切るとの市場観測は消えない」(三菱UFJモルガン・スタンレー証券の石井純氏)との声は根強い。

植田氏は24日の質疑でYCCについて、基調的な物価が改善する場合に「正常化の方向で見直しを考えざるを得ない」とする一方、改善しない場合は「市場機能の低下を抑制することに配慮し、どうやって継続するか考えていかないといけない」と指摘した。日銀の市場調節を担う金融市場局や他の政策委員と議論し「望ましい姿を決めていきたい」とも語った。

田村直樹審議委員が22日の記者会見で、22年12月の長期金利の許容変動幅の拡大後も「債券市場の機能低下が解消していないのは事実」と述べるなど、YCCの副作用は残ったままだ。ある国内証券のストラテジストは「植田氏は総裁就任後に現行の政策を総括・検証し、市場と十分コミュニケーションを取ったうえでYCC撤廃に動くのではないか」と語る。

YCCの撤廃や枠組み修正への観測がくすぶるなか、マイナス金利政策は当面維持するとの見方が多い。植田氏が日銀当座預金のマイナス金利適用残高がごく一部にとどまり「副作用の緩和策が採用されている」としたうえで、低金利環境をもたらすマイナス金利にはプラス影響もあると述べたためだ。三菱モルガンの石井氏は「植田日銀は4〜6月期にマイナス金利を継続したままYCCを終了する」と予想。「海外勢を中心に長期債の売り圧力が再び強まる」と話す。

実際、債券市場では新発2年物国債利回りがマイナス0.030%とマイナス圏に沈む一方、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは日銀の上限を超える日も目立ち始めた。「時と場合によりサプライズ的になることも避けられない面もある」と語った植田氏が、就任後で初となる4月の金融政策決定会合で政策修正を示唆する可能性は捨てきれない。市場は早くも身構えている。

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