投資情報ななめ読み

円高止めた200日線

外国為替市場で円高・ドル安が進んでいる。前週までの2週間の円の上昇率は2022年11月以来の大きさとなった。ただテクニカル分析で重視される200日移動平均線が円の上昇を食い止めたことで、円高は収まったとの見方も浮上する。今月下旬の日銀金融政策決定会合で政策修正があったとしても、円高に振れない可能性も意識され始めた。

「明確な材料もなく思惑だけに左右された円高だった」。岡三証券の武部力也シニアストラテジストは指摘する。

対ドルの円相場の上昇率は前週末14日までの2週間で4%を超え、22年11月以来の大きさとなった。同日には一時1ドル=137円台前半と、2カ月ぶりの円高水準を付けた。日銀が公表する午後5時時点の円相場は14日時点で10営業日続伸と、20年2~3月に付けた過去最長に並んでいた。18日も前営業日から横ばいにとどまった。

円高をもたらしたのは膨らんでいた円売りポジションを解消する動きだ。4月の植田和男日銀総裁の就任以降、金融緩和維持を見込んで投機筋が円売り・ドル買いの持ち高を膨らませてきた。米物価指標の下振れを機に進んだドル安が円売りポジションの解消も巻き込み、急速な円高圧力となった。

もっとも市場で注目されていた重要な節目を超えなかったことで、円高・ドル安局面は一服したとの声が多い。200日移動平均線は市場参加者がその間に取引した平均コストを意味し、この水準近辺では利益確定や損切り目的の売買が膨らみやすいとされる。

株式におけるPER(株価収益率)のような投資尺度がない外為市場では、過去の推移を表すチャートから将来の値動きを予測するテクニカル分析が他の市場以上に重視される。

円が高値を付けた14日には200日線は137円10銭前後で推移しており、跳ね返された格好になった。円がこの水準を上抜けなかったことで「6月末の1ドル=145円台から急速に進んだ円高局面は一服した」(あおぞら銀行の諸我晃チーフ・マーケット・ストラテジスト)。

通貨オプション市場でも一段と円高が進むとの見方は限られている。円・ドル相場の3カ月物のインプライドボラティリティー(予想変動率)は年率換算で10%程度にとどまる。同様に円高が進んだ22年11月の12%前後と比べ低い状況にある。蓄積した円売りポジションの解消が進んだことで、円相場はしばらく落ち着くとの見方を映す。

市場参加者の注目は27~28日の日銀金融政策決定会合に集まる。日本でも物価上昇率が3%超の状態が長引くなか政策修正への思惑は根強い。ただ既に「日銀の政策修正を見込んだ円買いが入っている」(邦銀ディーラー)。

日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)の修正に動いても日米の短期金利差は開いたままで、金利差から算出する円買いポジションのコストは重く円買い・ドル売りの持ち高は構築しにくい状況が続く。市場の持ち高解消が進んだことで、日銀の政策修正でも思ったほど円高に振れない可能性も意識され始めた。

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