7月製造業景況感、4カ月連続50割れ
【北京=川手伊織】中国経済の不振が長引いている。国家統計局が31日発表した2023年7月の製造業購買担当者景気指数(PMI)は4カ月連続で好調・不調の境目である50を割り込んだ。米中貿易戦争の影響で景気が減速した19年5~10月以来の長さだ。不動産市場の低迷や輸出の停滞が重荷となっている。
23年7月の製造業PMIは前月より0.3ポイント高い49.3だった。柱となる新規受注などが伸び悩んだ。PMIは50を上回れば経済が前月より拡大、下回れば縮小したことを示す。
「ゼロコロナ」政策下の20~22年は50割れの連続期間が長くても3カ月だった。感染拡大が落ち着くと行動制限を緩めて、一時的に景況感が回復していた。今春以降、景況感がさえないのは、マンション販売の低迷など需要不足が深刻なためだ。
不動産シンクタンクの易居不動産研究院は、7月の主要50都市の新築取引面積が前年同月比37%減少したと予測する。水準も新型コロナウイルス禍が初めて中国経済を直撃した20年2月以来の低さとなる。厳躍進研究総監は「今後さらに減少するリスクがある」と指摘する。
これまでの利下げをうけ、住宅ローン金利は過去最低を更新している。それでも売買に勢いがつかない。「住宅ローンなどの引き下げが需要を押し上げるのに効果的なのか」(米ピーターソン国際経済研究所)といった疑問は少なくない。
中国政府は31日、消費回復を促す施策を発表した。購入制限の緩和や税優遇で自動車販売をテコ入れし、ネットにつながる家電「スマート家電」などへの買い替えも支援する。需要喚起策などへの期待から、7月のPMI統計のうち製造業の先行き見通しを示す指数は改善した。
気がかりなのは、家計の雇用などに対する将来不安だ。6月の都市部新規雇用は前年同月比0.8%増にとどまった。4月と5月は上海が都市封鎖に踏み切った前年の反動もあり、同4~5%伸びていた。
雇用の受け皿となってきたネット配車サービスでは、台数制限の動きが広がる。5月に規制を導入した湖南省長沙や海南省三亜に続き、上海も7月に新規参入の抑制を打ち出した。過当競争による運転手の収入低下などを懸念して規制に動くが、代わりとなる受け皿を見つけるのは難しい。