投資情報ななめ読み

日銀利上げ、何%まで 脱マイナス金利後を専門家に聞く

門間一夫氏/似鳥昭雄氏/岩下真理氏/河野龍太郎氏

日経新聞より引用

日銀のマイナス金利政策解除が射程圏内に入る中、解除の後、最終的に何%まで追加利上げが実施されるかという点への関心も強まってきた。国の財政や企業の経営、さらには家計にとっても重要な「金利ある世界のゴール」。その水準に関する予想を日銀OBや民間のエコノミスト、経営者に聞いた。

ありうる3つのケース みずほリサーチ&テクノロジーズ・エグゼクティブエコノミスト 門間一夫氏

日銀がどこまで利上げできるかは3つのケースがあり得る。まず0.5%くらいまでのケースAだ。次がゼロ%のケースBで、マイナス金利の解除しかできない場合である。最後は2%台まで利上げできるケースCだ。確率はAが65%、Bが30%、Cは5%だ。

3つのケースのどれになるかは、2%物価目標が実現するのか否か、実現といってもノルム(社会規範)の完全な変化を伴うものか、に依存する。

ケースAは2%目標がいったん一定期間実現するものの、人々のノルムが本当に変わったかは明確ではなく、2%の持続性に不安が残る場合だ。「グレーな2%実現」というべき状況であり、物価が1〜2%程度で推移するのがおおまかなイメージだ。

日本の自然利子率(緩和でも引き締めでもない実質金利)は小幅プラスと考えれば、仮に2%物価目標が明確に「クリーン」な形で実現するなら、自然利子率に2%インフレを乗せた2%台が中立金利(緩和でも引き締めでもない名目金利)だ。日銀がそこまで利上げしてもおかしくない。これがケースCだ。

だが蓋然性がはるかに高いのは2%がグレーなかたちでしか実現しないAで、利上げは今春のマイナス金利解除後、2025年末までに0.5%くらいにとどまるだろう。うまくいってもせいぜい1%までだ。

2%がグレーな形ですら実現しないこともあり得る。これがケースBで、本来利上げはできないはずだが、マイナス金利と長短金利操作政策には、市場機能の低下や金融機関経営への打撃など副作用もある。金融緩和の円滑な継続に向け副作用を和らげるためという理屈で、夏ごろと見られる金融政策の多角的レビュー公表の後、年内にマイナス金利や長短金利操作の解除だけは実施するだろう。

各ケースで長期金利(10年物国債利回り)がどこまで上がるかは、ケースAが1.5%、Bは1%弱、Cは2.5〜3%程度だ。メインシナリオのAであれば、財政政策への影響は限定的だろうし、株価が大きく下がったり、円高が大幅に進んだりすることもない。

恐る恐る0.5%へ ニトリホールディングス会長 似鳥昭雄氏

物価を考慮した実質賃金の減少が続くなか、マイナス金利政策の解除は、春季労使交渉を踏まえた判断となる。実質賃金がマイナスで個人消費も弱いと、利上げも進められないからだ。今年は、大手企業で4%超と前年水準を上回る賃上げが期待される。春季労使交渉の結果を踏まえ、日銀は4月にマイナス金利政策を解除するだろう。

足元では1ドル=150円前後と円安だ。日銀が利上げし、米国が年内に利下げすれば、年末に向けて円高が進むとみている。

実は今年中に1ドル=130円台前半まで円高が進むと予想していた。最近は、140円より少し円高の130円台後半にとどまると考え直した。想定以上に米国景気が底堅く、日本経済に与えるマイナス影響も小さい。日銀にとって、政策金利を上げやすい状況になっている。

ただ、日銀は利上げによる景気の腰折れを心配している。解除後は半年から1年かけて、恐る恐る利上げをしていくとみている。企業の投資意欲や個人消費にショックを与えない範囲での利上げとなるため、政策金利の利上げは0.5%が精いっぱいで、1%まで上げないと予想する。

4月から半年間は景気への影響を慎重に見極めながら、まずは0.25%に引き上げるだろう。さらに日本経済が足踏みせず、緩やかな上昇を続けるようであれば、その半年後までに0.5%に上げるのではないか。仮に0.5%まで利上げが進んでも、個人消費や企業の設備投資が減退するといったマイナス影響は出ないとみている。

長期金利(10年物国債利回り)も急激には上がらず、当面は現在の水準のままで推移するだろう。マイナス金利政策が解除されても、企業の資金調達でコスト負担はそれほど増さない。

むしろ企業にとっては、日銀の利上げよりも人手不足の方がより深刻な課題だ。人手不足などを背景にした建設工事費の高騰が、投資判断に大きな影響を与えている。ニトリも工事費が安くなるのを待って、複数の土地で着工時期を3〜4年先に延ばすなど様子見の状況だ。

解除後、追加は難しい 大和証券チーフマーケットエコノミスト 岩下真理氏

2%の物価安定目標の達成を見通せる状況が近づいてきた。労務費の上昇を価格転嫁する動きが中小企業でも始まり、賃上げ機運が高まる。日銀は4月にマイナス金利政策を解除し、新たな短期の政策金利をおおむねゼロ%にするだろう。もっとも、以後の追加利上げは難しいのではないか。

第一に、米連邦準備理事会(FRB)の利下げが障壁になる。年後半にもFRBが利下げに転じるとみている。世界の景気が減速していく中で、日本だけが政策金利をどんどん引き上げていくのは難しい。過去も日米の金融政策が逆行したケースはない。

加えて、日本固有の要因が大きい。政府や日銀の財政はかつてない水準に膨らみ、利払い費の負担が重くのしかかっている。金利の上昇は財政赤字の拡大を招きかねないため、日銀は慎重にならざるをえない。

政権も金利の急上昇を避けたいと考えるはずだ。欧米と異なり、日本では変動型住宅ローンの利用が多い。利上げで住宅ローン金利が上がれば政権の支持率も低下しうる。政治的な配慮が作用し、利上げが困難になる展開も考えられる。

追加利上げが難しいとすると、円安の再加速が心配の種になる。ここ数年は輸出企業の業績が上向き賃上げの原動力となってきたが、円安に起因する企業業績の改善などを通じた賃金上昇圧力が、将来も続くかは分からない。世界景気の減速で日本企業の業績が悪化すれば、いくら円安でも賃上げの原資は減る。

怖いのは、賃金が上がらず円安だけが手元に残る未来だ。国民の実質的な所得は減り物価高の打撃は大きくなる。長い目で見れば、現在の円安水準は悪影響が大きいだろう。

欧米では、賃金上昇や物価高対策を訴えるデモやストが一般的だ。日本では、ほとんどみない。物価高に苦しむ現状は、消費者の賃金に対する感度の低さを映しているともいえる。日本の消費者は、賃金にもっと強気になる必要がある。

日銀の植田和男総裁の任期はあと4年間だ。FRBの利下げ終了が見込める2026年以降、利上げの第2ステージ始動に期待する。

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