投資情報ななめ読み

日銀の政策修正観測 海外勢踊らず、金利上昇の警戒限定

日経新聞より引用

国内の長期金利の上昇が一服している。日銀が長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の枠組みを修正するのではないかとの観測はくすぶるが、海外投資家の動意は乏しいとの見方がある。日銀の積極的な金利抑制により、海外勢は金利上昇に賭ける持ち高の反対売買を幾度となく迫られてきた。その記憶が残り、政策修正をにらんだ国債売り「YCCアタック」に慎重になっているようだ。

賃金上昇や人々の予想インフレ率の上昇を背景に、日銀がYCC修正に踏み切ることへの思惑が徐々に高まり、長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは12日に一時0.475%をつけた。もっとも12日発表の6月の米消費者物価指数(CPI)で前年比の伸び率が市場予想を下回り、同日の米長期金利が急低下。国内長期金利も13日は一時0.465%に低下し、日銀が許容する変動幅の上限である「0.5%」を試す動きは小休止した。

日銀の政策修正が強く警戒された昨年6月や今年1〜4月などの金利上昇は、海外勢が主導していた。足元はどうか。海外投資家の動向に詳しいみずほ証券の大森翔央輝チーフデスクストラテジストは「海外勢の間で、YCC修正はほとんど警戒されていない」と明かす。モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一マクロストラテジストも「海外投資家は日本国債売りには動いていない」と話す。

海外勢の動きを映し出す指標に、国内外の清算機関が示すスワップ金利の差(クリアリング・スプレッド)がある。海外勢が中心のロンドン拠点の清算機関LCHと、国内勢が利用する日本証券クリアリング機構(JSCC)で提示される翌日物金利スワップ(OIS)の金利差だ。

海外勢がYCC修正による金利上昇に警戒感を強めて、固定金利を支払って変動金利を受け取る取引に積極的になると、海外勢が利用するLCHの提示金利が上昇しクリアリング・スプレッドは拡大する。

この動きが如実に表れたのが、円安加速とともに日銀の政策修正への思惑が強まった昨年6月や、日銀が長期金利の許容変動幅を「0.5%程度」に拡大した直後の今年1月などだ。これに対して、10年物のOISのクリアリング・スプレッドは足元で約0.028%と今年の平均(0.029%)並みの水準にとどまる。YCCの修正を予想する海外勢の持ち高形成は、限定的といえる。

みずほ証券の大森氏は「日銀が大規模緩和を維持し、海外勢の金利上昇を見据えた取引では何度も損失が生じた。日銀の植田和男総裁が金融緩和に前向きなハト派的な発言を繰り返した。この2点が海外勢を冷静にさせている」とみる。7月会合でも現状維持となれば、再び金利が低下すると見込み「スワップ市場で固定金利を受ける海外勢もいる」(モルガンMUFGの杉崎氏)。固定金利受けは長期国債を買うのと近い取引で、YCCアタックとは真逆のトレードといえる。

海外勢が動いていないとすれば、「売り手は国内投資家」(国内証券の債券営業担当者)との声も聞かれる。これまでと異なり、国内勢が思わぬ政策修正に身構えている形だ。

経済のファンダメンタルズ(基礎的条件)を踏まえると、日銀が7月に政策修正に動くことは難しいとの意見は根強い。バークレイズ証券の海老原慎司チーフ債券ストラテジストは「日本の平均時給は消費者物価を押し上げるほどの上昇率にはなっておらず、YCC修正観測によって生じた金利上昇はオーバーシュート(行き過ぎ)だ」と指摘する。27〜28日の会合が近づくにつれ政策修正の思惑が一段と高まる可能性はあるが、利回りの上昇局面は絶好の買い場となるのかもしれない。

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