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日本株、上昇気流へ奮い立つ 24年予想2割が最高値

日経新聞より引用

「秋以降も中南米の年金基金などから新規の問い合わせが入ってきた」。BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストのもとには2023年春以降、海外投資家からの面談の要請がひっきりなしに届く。

大納会を迎えた12月29日の東京株式市場で日経平均株価の終値は3万3464円だった。年間では28%の上昇となり、57%高だった13年の「アベノミクス相場」以来の上昇率となった。

33年ぶりの高値に沸いた日本株市場を目にし「年金や政府系など中長期視点で投資先を探すファンドが本格的に『勉強』を始めている」(圷氏)。こうした動きが24年の株価の一段の押し上げ要因となると予想する。

日経平均株価、4万円超え予想も

日経ヴェリタスが市場関係者を対象にしたアンケート(回答者は68人)で、24年の日経平均株価予想の高値平均は3万6971円、安値平均は3万0599円だった。1989年12月29日につけた史上最高値(3万8915円)を更新するとの予想も2割あった。

原動力は企業の業績拡大を背景にした日本経済の「デフレ脱却」による成長期待だ。「値上げカルチャーの浸透による日本企業の利益率改善がカギだ」と野村証券の池田雄之輔チーフ・エクイティ・ストラテジストはみる。定着すれば、日経平均は「11月に4万円の節目にのせる」と予想する。

「『じゃがりこ』は値上げ後もほぼ数量を落とさず、強いニーズを実感している」。カルビーの江原信社長は23年4〜9月期を振り返った。6%の値上げにもかかわらず、主力商品の「じゃがりこ」の販売は13%増加。全体でみても原材料・動力費高騰の46億円の減収要因に対して、価格改定効果が91億円と大きく上回った。

24年3月期通期も増収増益を見込む。原材料費の圧迫は続くうえ、ポテトチップスのパッケージにRSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)の認証マークを表示するなど付加価値を向上させ「的確に価格に転嫁していく」(江原氏)方針だ。

値上げが受け入れられ始めたこともあり、東証プライム市場上場の24年3月期決算企業(親子上場の子会社などを除く)約1020社の純利益は3年連続で過去最高となる見通しだ。

賃上げもデフレ脱却の確度を高め、相場を押し上げる。23年の春季労使交渉(春闘)で3.58%と30年ぶりの伸びとなった賃上げ率は、24年予想が平均で3.94%に達した。「賃金上昇を伴う適度なインフレ経済への転換」(アイザワ証券の三井郁男ファンドマネージャー)で、政府による「デフレ脱却宣言」も視野に入る。

日銀・為替が焦点に

米国の利下げ観測も含め好材料がそろう中、「24年の日本株にとって最大の懸案は、日銀の政策変更とそれに伴う円高進行だ」(大和証券の壁谷洋和エクイティ調査部長)。

値上げと賃上げの定着は大規模な金融緩和を堅持してきた日銀が引き締めに向かう条件を整えることになる。「賃金と物価の好循環が強まり、2%の物価安定目標が持続的・安定的に実現する確度が十分高まれば、金融政策の変更を検討していく」。日銀の植田和男総裁は12月25日、経団連の会合で明言した。

日銀が24年に長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)を撤廃し、現在マイナス0.1%の短期金利をゼロ%以上に上げるとの予想は55%にのぼる。うち8割が年前半の実施を見込む。

日銀が短期金利を24年中に0.1%以上にし、「金利ある世界」が戻るとの予想も4割を超える。「24年10月頃に0.3%程度まで引き上げられるのではないか」(三菱UFJ銀行の井野鉄兵チーフアナリスト)。トランプ政権復活に市場が身構える11月の米大統領選とともに、株価の重荷になる可能性がある。

日経平均は23年、卯(う)年の相場格言「跳ねる」の通り高値をつけた。戦後6回あった辰(たつ)年の日経平均の年間騰落率は28%上昇と十二支のなかで断トツだ。24年は「昇り竜」がごとく上昇気流相場を実現できるのか展望する。

好業績・脱デフレで株高へ

2024年の株式相場はどうなるか。日経ヴェリタスが実施した市場関係者へのアンケートでは、力強い上昇相場が続くとの見方が大勢を占めた。企業業績の改善や日本経済の「デフレ脱却」による成長期待、米連邦準備理事会(FRB)の利下げ予想が背景にある。生成AI(人工知能)といった技術の普及も、日経平均株価が史上最高値をうかがう原動力になる可能性がある。

市場関係者66人の24年の日経平均株価の予想によると、高値平均は3万6971円、安値平均は3万0599円だった。高値をつける時期は12月との予想が7割と最多だった。回答者の2割にあたる13人が1989年12月につけた史上最高値(3万8915円)を超えると予想した。

日経平均の上昇要因として企業業績の改善をあげる回答が最多だった。デフレからの脱却による、日本の景気拡大をあげる声も多かった。カギを握るのが春季労使交渉(春闘)における賃上げ率だ。

予想の平均は3.94%となった。23年の賃上げ率(3.58%)を超えるとの見方が大勢で、「4%以上」と回答した割合も5割近くにのぼった。SMBC信託銀行の山口真弘投資調査部長は「春闘での賃上げに伴い、実質賃金の伸びがプラスに転じる。インフレが企業業績の改善につながる」とみる。

米利下げ観測も株高を後押し

さらに株高の要因になるのがFRBの利下げへのシフトだ。「米国の利上げ終結・利下げ開始は、グローバルなリスクオン要因になる」(東海東京調査センターの長田清英チーフストラテジスト)。年前半にも利下げが始まるとの見方から、足元で米長期金利は4%を下回る水準まで低下している。

いちよしアセットマネジメントの秋野充成取締役は「金利が低下する中で米国の景況感が底堅く、ゴルディロックス(適温)環境が持続する」として、日経平均は12月に3万9800円まで上昇するとみる。

注目の投資テーマはAI・防衛・DX…

物色面では利益成長期待が高いことから「グロース株優位」と予想した割合は62%と、23年調査に比べ約10ポイント増えた。23年は銀行などのバリュー(割安)株の上昇が目立った。

「生成AIがもう一段盛り上がる」(りそなアセットマネジメントの黒瀬浩一チーフ・ストラテジスト)との予想も見逃せない。注目の投資テーマでは8割が「AI」と回答した。2位の「防衛」、3位の「デジタルトランスフォーメーション(DX)」を50ポイント以上引き離した。

23年はAI向け半導体をてがける米エヌビディアの株価が大幅に上昇したほか、東京市場でもアドバンテストレーザーテックが大商いを見せた。生成AI利用率は米国でも3割程度との調査もあり、市場拡大の余地は大きい。AI関連は24年でも引き続き「本命」テーマとなりそうだ。

米市場についても堅調な見通しが多い。ダウ工業株30種平均の高値予想の平均は3万9223ドル、安値は同3万3368ドル。ファイブスター投信投資顧問の大木将充取締役運用部長は「米利下げがあれば、黙っていても米国株は上がる。米中摩擦の緩和が実現すれば、(さらに)株価上昇が加速する」とみる。

「11月の大統領選の通過による不透明感の払拭などから、年末に向けて過去最高値の更新が期待される」(岡三証券の松本史雄チーフストラテジスト)との声もあった。

(学頭貴子、小池颯が担当した。グラフィックスは田口寿一)

[日経ヴェリタス2023年12月31日号]

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