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円安、物価に上昇圧力 140円台定着なら0.3%上振れ

円の対ドル相場が2023年の高値から1割下落し、外国為替市場では半年ぶりに1ドル=140円台で推移している。この水準が続くと輸入物価の上昇を通じて23年度の物価は0.3%上振れする見通しだ。消費者の負担増を上回る賃上げが日本経済の好循環実現のカギを握る。

日本は円安・ドル高が進むと輸入物価に上昇圧力がかかる。輸入物価が上がると、消費者物価指数(CPI)も上昇し消費者の懐を直撃する。大和証券によると、4月のCPI(生鮮食品を除く)の前年同月比上昇率3.4%のうち、0.9%分は円安の影響だった。

対ドルの円相場は今年の高値(1月の127円20銭前後)から13円ほど下落し、下落率は1割程度となった。みずほリサーチ&テクノロジーズによると、対ドルで1割円安が進むとCPIを0.2〜0.3%ほど押し上げる効果があるという。

今は1ユーロ=150円台などドル以外の通貨に対しても円安が進んでおり、CPIの押し上げ効果は0.3%に近くなるか、それを上回る可能性もある。

食品や耐久財の値上がりで1世帯当たりの負担は平均で年9万円ほど増えるという。みずほリサーチの酒井才介主席エコノミストは「円安によって物価が高止まりする」と指摘する。日銀はエネルギー価格の低下で23年度後半に物価は2%を下回るとみているが、日米の金利差拡大に伴う円安が伏兵になりそうだ。

電力大手7社が6月1日から予定する家庭向け電気料金の値上げも物価の押し上げ要因となる。野村総合研究所の木内登英エグゼクティブ・エコノミストは電気料金の値上げが「消費者物価全体を0.42%押し上げる」と試算する。

帝国データバンクによると、主要食品企業195社は6月以降に6000品目近い値上げを予定する。22年に本格化した値上げの波は収まっていない。日本株に海外投資家の資金が流れ込んでいる理由の一つは、物価上昇と賃上げの循環が続くことで日本がデフレ経済から脱却することへの期待だ。

高いインフレ率を上回って賃金が上がれば、全体でみた家計の痛みは吸収でき、政府・日銀が重視する賃金上昇を伴った持続的・安定的な物価上昇の実現につながる。

23年の春季労使交渉での賃上げ率は3.67%と30年ぶりの高水準となり、物価上昇率(22年度は3.0%)に見劣りしない賃金上昇が実現した。賃上げの持続力が試されることになる。

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