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中国の2国間決済、人民元初の米ドル超え 23年4〜6月

日経新聞より引用

中国が取引相手となる2国間決済で、中国の通貨・人民元の利用が広がっている。企業や機関投資家などによる決済通貨を集計したところ、人民元建ての割合は2023年4〜6月期に49%となり、初めて米ドル建てを上回った。資本市場の開放やロシアとの取引拡大の影響が大きい。世界全体の決済では人民元比率は3%弱にとどまるが、「ドル離れ」が進み始めた。

中国国家外貨管理局が公表する統計資料を基に、企業や個人、投資家の越境(クロスボーダー)取引を通貨別に集計した。中国政府は09年に人民元建て貿易決済を解禁した。貨物やサービス、経常移転などで構成する貿易決済に加え、株式や債券の売買など資本取引決済が含まれる。

今回の集計には中国を直接介さない第三国間の貿易・資本取引の人民元決済は含まれていない。国際銀行間通信協会(Swift)によると、第三国間も含む世界全体の決済額シェアは23年6月時点で米ドルが42.02%と首位、人民元は2.77%でユーロ、英ポンド、日本円に続く5位となっている。

世界の国内総生産(GDP)に占める中国の割合に比べて、人民元決済の世界シェアはまだ少ない。ただ約5年前の1.81%からは上昇しており、存在感が徐々に高まっている。その原動力が中国の経済力を背景にした2国間決済だ。

中国人民銀行(中央銀行)によると人民元建て越境決済額は22年時点で総額42兆1000億元(約827兆円)だった。うち資本取引が31兆6000億元で7割を占める。貿易など経常取引が10兆5000億元だった。

23年4〜6月期の人民元建て越境決済額は前年同期比11%増の1兆5104億ドル(約211兆円)、米ドル建ては同14%減(1兆3997億ドル)だった。遡れる10年以降のデータを見る限り、四半期ベースで人民元が米ドルを上回るのは初めてだ。

人民元建て決済の拡大は①資本市場の開放②貿易決済における「脱ドル」化――の2つの要因がある。

中国政府は外国人が香港を経由して人民元建ての株式・債券を売買できるようにしてきた。14年の株式相互取引(ストックコネクト)、17年に債券版の「債券通(ボンドコネクト)」導入が人民元建て決済額を押し上げた。22年には上場投資信託(ETF)、23年には金利スワップの相互取引を始めた。

貿易金融ではロシアとの人民元取引拡大が影響している。ロシアは22年のウクライナ侵攻後、米欧日の金融制裁でドルやユーロの決済網から締め出され、中国との原油取引に人民元を使う。ロシア中銀によると3月の外国為替取引における人民元の取引量シェアは過去最高の39%に上昇した。

今後も人民元決済のシェアは高まる可能性が高い。中国政府によって人民元の国際化を強化する方針が示されたからだ。

15年の人民元切り下げが意図せぬ相場変動をもたらし、人民元の国際化は一時的に停滞した。ところが22年10月の中国共産党大会で、習近平(シー・ジンピン)総書記は人民元の国際化を「秩序だって進める」と発言し、従来の方針である「着実かつ慎重に進める」に比べて、より積極性が増した。

中国政府は相次ぎ2国間協定の締結に動いた。南米ブラジルとは3月、大豆の主要輸出先である中国との貿易や投資で、米ドルを介さずに人民元とレアルを交換することで合意した。同じくアルゼンチンは4月、中国からの輸入品の決済を米ドルから人民元に切り替えると発表した。

多くの新興国は為替取引で米ドルへの依存を減らしたいと考えている。米国がドルの支配的な地位を使ってロシアに金融制裁を加え、一部の国々が「脱ドル」を考える契機となった。国際情勢の変化は人民元の国際化にとって追い風だ。米国を中心とする民主主義陣営が米ドル決済を続ける一方、中国と政治・経済の関係が深い国は人民元にシフトし、通貨の分断やブロック化につながる可能性がある。

中国は巨額のバイイングパワー(購買力)を武器に、資源取引における米ドル支配にもくさびを打ち込もうとしている。23年3月に中国国有石油大手の中国海洋石油(CNOOC)と仏トタルエナジーズが、上海石油天然ガス取引センターを通じて中国初の人民元建て液化天然ガス(LNG)取引を行った。

人民元は相場変動を避けるため国際送金や両替で依然として厳しい規制がある。使い勝手の悪さが国際化の障壁となってきた。習指導部は国際化と通貨安定のバランスを取りながら段階的に規制緩和を進めていくとみられる。

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