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マイナス金利解除は24年前半、賃上げ確認できる4月有力

日経新聞より引用

2024年は日銀にとって緩和的な金融政策からの転換を決める年となりそうです。23年春に就任した植田和男総裁が24年前半にもマイナス金利政策を解除するとの観測が市場に広がっています。一方、米連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)が24年中に引き締め局面を終え、利下げに転じるとの見方もあります。24年の金融政策を展望します。

マイナス金利の解除はいつか

植田和男総裁は12月25日の講演で、物価2%目標の実現に向け「確度は少しずつ高まっている」との認識を示しました。その上で「来年の春季労使交渉で、はっきりとした賃上げが続くかが重要なポイントとなる」と語っています。

市場では日銀が24年前半にもマイナス金利の解除に踏み込むとの観測が出ています。QUICKの月次調査(12月、外国為替市場)によると、解除時期は24年1〜3月が36%、4〜6月は43%と約8割が24年前半での解除を予想しました。

23年前半の決定会合は1、3、4、6月の計4回です。春季労使交渉は例年3月中旬に集中回答日を迎え、その後に複数回にわたって集計結果が出ます。そのため市場は日銀が結果をある程度確認できる3月以降の可能性が高いとみています。

ただ、3月は企業決算シーズンです。マイナス金利解除に伴って金利が急上昇すれば、小規模な地銀などの保有する有価証券に多額の損失が出て経営に悪影響が出る可能性があります。金融庁内にも「3月はリスクがある」との声があります。

そのため4月の金融政策決定会合で物価目標達成を織り込んだ新たな物価見通しを示し、解除するシナリオが有力視されています。

1、3月も無風とは限りません。植田総裁は春季労使交渉の結果を待たずとも、支店長会議などを通じて賃上げなどに関するデータを集められるとし、早期解除の可能性を残しています。

岸田文雄政権は派閥の政治資金問題などもあって支持率が低迷しています。政治が混乱すれば、日銀の判断に影響する可能性もあります。

物価高は続くのか

物価上昇の勢いはやや鈍化しています。11月の消費者物価指数(CPI、生鮮食品除く)の前年同月比上昇率は2.5%で、10月(2.9%)を下回りました。

現在の物価高はウクライナ危機に端を発した原材料高が発端で、円安が拍車をかける構図でした。原材料高の影響は一巡し、28日の円相場は対ドルで一時140円台後半と151円94銭をつけたピーク時(22年10月)より落ち着いています。

一方、人件費の動きを反映しやすいサービス関連の価格上昇は続いています。11月のCPIからサービス関連だけを集めた伸び率は2.3%と10月(2.1%)を上回りました。植田総裁は12月の記者会見で「輸入物価の国内物価への転嫁の動きが終盤に差し掛かりつつある」とし、特にサービス価格動向を注視すると述べています。

日銀は10月、24年度のCPI(生鮮食品除く)の上昇率を2.8%、25年度を1.7%とする見通しを発表しました。見通しは過去にたびたび上方修正を迫られ、物価高がこのまま落ち着くかは不透明な面もあります。

日銀内にはサービス関連も含めて物価が大きく下落すれば「マイナス金利解除をする必要性が薄れ、解除時期も遠のく」との見方もあります。今後の物価情勢の変化をどう見極めていくかも焦点です。

米欧中銀はいつ利下げに転じるか

FRBは12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を据え置き、24年に0.25%の3回分に相当する利下げを実施する予想を示しました。 パウエル議長も会見で利下げ時期について議論を始めたことを認めています。

11月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比2.6%上昇し、10月(2.9%)から鈍化しました。ニューヨーク連銀のウィリアムズ総裁は「将来のことを話すには時期尚早」と早期利下げ観測をけん制しましたが、金融市場はFRBが来年3月にも利下げに転じるとの見方に傾きつつあります。

ECBも14日の理事会で政策金利を2会合連続で据え置くと決めました。ただラガルド総裁は理事会後の会見で「我々は利下げを議論していない」と引き締め維持を強調しました。ECBが24年春にも利下げを始めるとの市場の観測は後退しつつあります。

日銀内には「米欧の利下げ前にマイナス金利を解除したほうが影響が少ない」との声があります。為替相場の変調などを通じ、国内経済への影響が予想されるからです。日銀はマイナス金利の解除にあたり、こうした国内外の動向も踏まえた判断を迫られることになります。

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