投資情報ななめ読み

外国人買い第2波呼ぶのは「高くなるニッポン」

日経新聞より引用

海外投資家による日本株買いの勢いが鈍ってきた。利上げが進む米欧や中国リスクを避けたマネーが押し寄せたのは6月まで。株価が低位だった「安いニッポン」への買いが一巡すると、株高も足踏みとなっている。ここから新たな買いの波を呼び込めるかは、賃金が持続して上がり、企業の利益率が上昇する「高くなるニッポン」に変われるかがカギになる。

南米チリで年金基金を運用するAFPキャピタルの運用責任者、ニコラス・グリッサー氏は7月初めて来日した。自分で日本株を調べるためだ。

すでに今年、日本株配分を引き上げる判断をした。「米国株は割高で、欧州は高インフレに苦しむ。株価がまだ低位で先進国であまり問題を抱えていなかったのが日本」というのが理由だった。

今後の判断をどうするか。「日本企業の経営が変わるという話は何年も聞かされてきた。今度こそそうなることを願うが、本当かどうかだろう」

3月下旬から累計6兆円超となった海外投資家の買い。日経平均株価を33年ぶり高値に押し上げたが、その勢いに一巡感がある。7月3日につけた年初来高値3万3753円に比べ、21日は4%安だ。

シティグループ証券の阪上亮太ストラテジストは株高はここでいったん止まるとみる。「株高が進んで日本株の相対的な割安さは薄れ、短期的な資金が主導する買いの勢いが弱まってきた」

阪上氏がみるのは2013年の「アベノミクス相場」との違いだ。当時は大規模な金融緩和と財政出動で日本国内の変化に期待が高まった。銀行や不動産、中小型株に個別に物色が広がった。

今回はむしろ米地銀破綻、中国経済の減速など世界的に不安が高まる中で、割安だった日本が相対的に浮上した。米投資家ウォーレン・バフェット氏の商社株投資も相まって、まず先に先物や株価指数に資金が入った。

逆に不動産や中小型株の動きは鈍い。脱デフレやPBR(株価純資産倍率)向上に期待するなら上がるべきだが、そうなっていない。「日本独自の変化で買うにはまだ『証拠不十分』だ」(阪上氏)

バンク・オブ・アメリカが実施する世界のファンドマネジャー調査もそれに符合する。7月の調査で「最も過大なポジション」という質問で、1位の「大型テック株の買い」(59%)に次いで、「日本株の買い」(14%)が2位に入った。

日本株の「アンダーウエート」はここ2年ずっと定着。6月に改善を見せたとはいえ、多くの投資家は日本株への配分を落としている。なのに早々に日本株への警戒が顔を出してきた。この先の持続的な株高に大きな期待がまだないと読める。

「安いニッポン株」をまず拾ったのが海外投資家による「第1波」の買い。それが一巡したとすれば、次の「第2波」を呼び込む条件は何か。

BofA証券の圷正嗣チーフ日本株ストラテジストはカギは長期投資家の動きだという。7月初旬に香港、シンガポールを回って潜在的な関心の高さを感じた。「すぐではない。日本に変化が出てくれば、それに合わせて投資資金が増えてくるのでは」

その場合のキーワードは「高くなる」だ。「マクロでは賃金上昇が構造的に続く流れになるか、ミクロでは企業の経営改革が本当に資本効率を高めるか」(同氏)だ。

今年の春季労使交渉では賃上げ率が3%超と約30年ぶりの高さとなった。来春もこれが続くかが次のハードル。賃金を上げ続けなければならない前提になれば企業の価格戦略もおのずと変わるからだ。

値上げを受け入れてもらうには強みのある分野を優先して磨くべきだ。そのために経営資源も集中させる。インフレを前提にした歯車が動き出せば、収益率の向上という循環が起こりうる。

店舗の数の勝負ではなく、より付加価値の高い商品戦略に切り替えつつあるコンビニ。コロナ禍で客数を抑えても入場料を上げる戦略をとったオリエンタルランド。変化の芽はある。

23年4〜6月期の連結純利益が前年同期比55%増となったニデック。永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)の説明も「これだけの利益が出たのは技術革新。値上げだけではない」と両方だ。

ただ海外投資家のあいだで、日本企業の資本効率の改善に懐疑的な見方が消えないのも事実だ。アベノミクス相場も円安が止まると自己資本利益率(ROE)が落ちてしまった。期待は失望となり日本株売りに転じた。

チリの年金基金もアベノミクス当時、日本株への配分を一度高めたが結局は減らした。長期に考えるほど「証拠を見たい」との声になる。

第1波には、元々日本株になじみの少ない「ツーリスト投資家」も多かったとされる。ただ安さだけなら去る足も速い。賃金や利益率が「高くなるニッポン」として評価を得ることで、長くいるほど株式価値が上がると期待を持てる市場になるのが大事だ。それがバブル最高値を上に抜け出るための条件になるのだろう。

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