ローンや財政、隅々に波及
長くゼロやマイナスだった日本の金利に変化が訪れている。7月に日銀が政策を変更したことで、お金の貸し借りの基準となる長期金利は約10年ぶりの水準まで上昇した。動き始めた「金利のある世界」は暮らしや企業経営をどう変えるのか。3つのグラフィックとともに探る。
日銀は国債を市場から買い入れることで金利を低く抑えてきた。ところが最近の物価高を受けて政策を修正し、金利が1%まで上昇するのを事実上容認した。長期金利は11日、2014年1月以来となる0.7%台をつけた。
影響は経済の隅々に及ぶ。大口の定期預金の店頭金利は8月時点で0.009%。22年初めの4.5倍の水準で、キャンペーンでさらに高い金利を提示する銀行もでている。銀行の貸出金利も上がっており、負担が増す中小企業の倒産が増える懸念もある。
財政への影響も大きい。財務省は24年度予算の概算要求で想定金利を1.1%から1.5%に引き上げた。国債の発行に伴う負担が重くなる。
個人の生活に最も関係するのは住宅ローンの動向だ。住宅ローンには契約時から金利が動かない固定型と、半年おきなどで金利が見直される変動型がある。固定型の金利は長期金利に連動して上昇しており、優位性が薄れている。
一方、変動型の金利は短期金利に応じて見直される。日銀は短期金利をマイナスとする政策を保っており、変動型の金利は低下を続ける。固定と変動の金利差が開き、変動型に人気が集中する構図だ。
日銀がいつマイナス金利政策を解除するかが焦点となる。日銀は2%物価目標の持続的・安定的実現が見通せるまで継続するとしており、そこにはまだ距離があるという立場だ。ただ今後も物価上昇が止まらずマイナス金利政策が解除されれば、変動型の住宅ローンにも金利上昇の波が押し寄せる可能性がある。
(三島大地、グラフィックス 渡辺健太郎)
3Graphicsのまとめサイトはこちら(https://www.nikkei.com/theme/?dw=23061500)