1週間で3円下落
【ニューヨーク=三島大地、野一色遥花】26日のニューヨーク外国為替市場で円は1ドル=158円台前半まで下落した。1990年5月以来、34年ぶりの安値をつけた。同日発表の米物価指標でインフレの加速が確認され、米長期金利には上昇圧力がかかっている。日米金利差の拡大が意識され、円の急落につながった。
米商務省が同日発表した3月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比の上昇率が2.7%と、2月の2.5%から加速した。米連邦準備理事会(FRB)による金融引き締めが長期化するとの警戒が強まった。米金利先物市場が織り込む年内の利下げ回数は1回以下が6割に達し、年初の6~7回から急減した。
FRBの利下げが遠のくとの見方から、長期金利の指標となる10年物国債利回りは4.6%台後半と年明け以降、上昇傾向が続く。
一方、日本では26日の金融政策決定会合で日銀が金融政策の現状維持を決めた。植田和男総裁は同日の記者会見で円安について「基調的な物価上昇率に大きな影響を与えていない」との見方を示し、円安に対応した利上げは遠いとの見方が広がった。
日銀の決定前は1ドル=155円台半ばで推移していた。日銀は26日、政策金利を0~0.1%に据え置き、国債の買い入れ額も従来通りを維持すると決めた。「市場は無味乾燥したガイダンスに明らかに失望している」(オランダ金融大手INGのカン・ミンジュ氏)など、日米の金融政策の方向性の違いが意識され、円売り・ドル買いが加速した。
焦点は日本政府による円買い・ドル売りの為替介入の有無だ。週間の円の下落幅は3円を超え、財務省が2022年に為替介入に踏み込んだ当時と状況が近似する。2年ぶりの介入が視野に入る。
ただ、日米の金融政策の方向性が変わらない限り、介入の効果は限定的との見方もある。フォレックス・ライブのアダム・バトン氏は「米ドルや米国のファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)が好転するまでは、川の流れに逆らうようなものだ」と話す。