投資情報ななめ読み

「パウエル氏議会証言でダウ平均574ドル安」真の理由

日経新聞より引用

7日のパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長発言は、ほとんど事前に予想された内容であったが、米ダウ工業株30種平均は前日比574ドル安と大きく下げた。なぜか。まずは、今回の公聴会スケジュールに無理があった。

今週10日には米雇用統計、来週の14日には米消費者物価指数(CPI)、15日には米卸売物価指数(PPI)に米小売売上高と重要経済指標が発表される直前の7〜8日に、米上院銀行・住宅・都市問題委員会が開催されたからだ。

最新の重要指標動向を確認した直後の16日以降にこの公聴会がセットされていれば、パウエル議長も「データ次第」で臨機応変の答弁ができたであろう。例えば、2月雇用統計で、新規雇用者数が1月の50万人超から20万人程度に減少してさらに1月の数字が下方修正され、失業率は3.5%と僅かながらも上昇すれば、パウエル議長もディスインフレーション傾向を語り続けることができたであろう。

しかし、2月雇用統計発表の3日前では「FRBはディスインフレーションをクリエート(創造)すべく動いている」「コアのインフレ率が下がってはいるが、いまだ十分とは言いかねる」「これまでの利上げの効果をいまだ全て確認できているわけではない」と、暗中模索を想起させるごとき答弁を繰り返さざるを得なかった。

しかも、議会公聴会ではFRB議長を「被告席」のごとき位置に座らせ、しかも2日間にわたり議員たちが入れ替わり3時間近くも「尋問」する。なかには民主党急進左派エリザベス・ウォーレン上院議員のように強いアンチFRB派もいる。多くの議員は金融政策には疎く、自らの選挙区での経済問題を引き合いに出す「パフォーマンス」が目につく。7日には、自らが以前に10%の金利で長期融資を受けた「失敗話」を持ち出す議員もいた。

そこで思い出されるのは、イエレン前FRB議長(現財務長官)の議会公聴会での対応ぶりだ。生粋の経済学者が学生に対してかんで含めるごとき説明を丁寧に辛抱強く3時間続けていた。同氏特有のブルックリンなまりも上から目線になりがちな答弁のトーンを中和させていた。

対してパウエル議長は素っ気なく言ってのける傾向がある。7日は珍しく「中立金利」について、議員の質問に答えるかたちで説明していた。各議員の質問時間は5分と決められているのだから、イエレン流に丁寧に説明して時間を稼ぐ手もあったであろう。それが「議員との対話」の極意のようなものだ。

なお、7日の米国株式市場ではダウ平均がパウエル議長証言の前後にわたり、ほぼ一貫して下げ続けた。通常は、冒頭の金融政策報告書に関する議長声明読み上げに要旨が盛り込まれているので、市場の反応も最初の20〜30分程度に集中する。

7日に株価下落が長引いたのは議員の質問への答弁に、ところどころアルゴリズム売買を発動させるような表現が入ってしまったことも一因だ。例えば「引き締め過ぎを示唆するような経済データはない」。これでは、まだまだ引き締め余地が多く残ると解釈される。「サービス業セクターの頑固なインフレに対して、我々ができることは少ない。(金融政策効果は)強いが鈍い」。これでは、お手上げ感が強い。「中立金利がどの程度か分からないことが問題だ」。これも、無力感が強い。

筆者は7日の公聴会長丁場の最中にいわゆる「高頻度取引(HFT)投機筋」の人たちともZoom(ズーム)で話し合ったのだが、「パウエルさんのおかげで大もうけできた」との高笑いが印象に残った。

結局、重要経済指標発表直前のFRB議長議会証言というスケジュールは、彼らには絶好の草刈り場となっていたのだ。10日の雇用統計後も来週にかけてさらなる大もうけのチャンスがあると、ほくそ笑んでいる。

それゆえ筆者は、7日のダウ平均574ドル安は気配値程度にしか見ていない。当面、ちゃぶ台返しリスクがついてまわる。まともなファンドは株式運用に関しては傍観に徹している。米短期国債で年率5%前後もいただけるのなら、それで十分との考えだ。

まずは何といっても、10日発表の2月雇用統計に市場の注目がいつにも増して高まっている。ここからが「本番」である。

短期トレード向きの「DMM FX」

-投資情報ななめ読み