【ロンドン=大西康平】スイスの金融大手UBSによるクレディ・スイス・グループの救済買収の発表後も、世界的な金融システムへの不安に対する懸念は払拭されていない。20日、UBSの株価は一時前週末に比べ16%、クレディ・スイスも同6割それぞれ下がった。銀行株が売られる一方で金の国際価格が一時、1年ぶりの高値をつけるなど金融市場はリスク回避の動きが目立つ。
UBS株が売られる背景には、クレディ・スイスの買収が、かえって業績悪化につながるとの懸念が出ているためだ。迅速な救済に際し、クレディ・スイスの資産価値がどこまで精査できたかを疑う見方がある。
英キャピタル・エコノミクスのアンドリュー・ケニンガム・チーフ欧州エコノミストは「(資産価値の下落で)さらなる損失は否定できず、UBSへの追加支援が必要となる可能性がある」と指摘する。
金融機関の経営不安が広がりかねないとの観測から、欧州の他の銀行株も売られた。ドイツ銀行は一時前週末に比べ11%安、BNPパリバは同9%安となった。ドイツDAX指数も同2%安のあと上昇に転じる場面もあるなど、代表的な株価指数の動きも不安定だ。
金融システム不安が融資の減少などを通して景気悪化につながるとの見方から、相対的にリスクが低い債券や金が買われている。ドイツの10年物国債の利回りは一時、前週末比約0.17%下落(価格は上昇)し約1.94%となった。
金の国際価格(NY先物)は日本時間の20日午後、心理的な節目となる1トロイオンス2000ドルに到達した。一時2010ドル台と、約1年ぶりの高値をつけた。