投資情報ななめ読み

マイナス金利解除、勢い増す3月論 市場予測で4月と拮抗

マイナス金利政策の解除時期で3月論と4月論が拮抗してきた。日銀から早期解除を意識した発信が相次いでいるためだ。金融政策の見通しを反映する2年物国債の利回りは1日、13年ぶりの高水準をつけた。政府内からも3月解除への異論は聞こえず、日銀の見極めは最終段階に入る。

植田和男総裁は2月29日、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が開かれたブラジル・サンパウロで記者会見した。物価2%目標の達成が見通せる状況に「まだ至っていない」と述べ、賃金と物価の好循環が回るか「確認していく作業を続ける」と強調した。

2月29日に大津市で講演した高田創審議委員の「(達成が)ようやく見通せるようになってきた」との発言をさらに前進させることはなかった一方、13日に集中回答日を迎える春季労使交渉の結果を「一つの大きなポイントだ」と指摘。データ次第で最終判断する姿勢を示した。

2023年10〜12月期の国内総生産(GDP)速報値が2四半期連続のマイナス成長となり、市場では「政策修正への冷や水」(市場関係者)との見方もあったが、植田総裁は「新型コロナウイルスからの経済再開後の踊り場。景気はゆるやかに回復している」との見方を堅持した。

日銀は18、19日に金融政策決定会合を開く。植田総裁は解除時期の言質を取らせなかったが、市場では「3月解除」を予測する声がじわり増えてきた。

日本経済新聞社が1日、エコノミスト13人に緊急アンケートを実施したところ、「3月解除」の予想は4人(3割)だった。「4月解除」の8人(6割)がなお多いものの、このうち3人は「3月解除の可能性もある」とした。

BNPパリバ証券の河野龍太郎氏は「高田審議委員と植田総裁の発言は3月解除の予想をさらに裏付ける内容だった」と話す。大和証券の岩下真理氏も「3月か4月なら3月の方がよい。春季労使交渉の1次集計でベアが前年を上回ることが確認できれば解除する」とみる。

一方、「急ぐ必要はなく、4月解除になると思う。4月は量的にも質的にも判断材料が増える」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との見方も根強い。中小企業を含めて賃上げのデータがそろうためだ。

債券市場は3月解除を織り込みつつある。金融政策の見通しを反映しやすい新発2年債の利回りは1日、一時前日比0.010%高い0.190%をつけた。新発2年債として2011年5月以来の高水準だ。新発5年債利回りも前日比0.015%高い0.380%まで上昇した。

政策判断と無縁ではない政治も3月解除で壁にはならなそうだ。首相周辺は「タイミングをいつにするかはまさに日銀で決めること。とやかく言うことはなく不安視する声もあまりない」と語る。財務省幹部も「(3月でも4月でも)日銀はどちらでも動けるようにしている」として3月解除を排除しない。

カギを握る賃上げの状況も追い風になる。サントリーホールディングスが2月28日に組合員平均で約7%の賃上げを求める労働組合の要求に満額で回答するなど、13日の集中回答日を待たずに早期妥結の動きが広がる。植田総裁も「大企業中心に前向きの姿勢がかなりの企業から発せられていることには注目している」と期待を示す。

日銀内からは「お膳立ては整いつつある。あとはいつ(日銀執行部が)決断できるかだ」との声が漏れる。決定会合まで2週間あるため「当日まで何が起きるか分からず、ぎりぎりまで見極める」(日銀関係者)とみられるが、判断の時期は着実に近づいている。

(サンパウロ=五艘志織、東京=小野沢健一)

短期トレード向きの「DMM FX」

-投資情報ななめ読み