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米利上げ長期化に警戒感、実質金利は14年ぶり高水準

日経新聞より引用

金融市場で米連邦準備理事会(FRB)の利上げ長期化に対する警戒感が強まっている。長期金利が上昇基調にあるなか、引き締め度合いを映す「実質金利」は14年ぶりの高水準にある。目先の景気後退懸念は後退したものの、長引く利上げが経済活動を冷やしすぎるリスクもある。

長期金利の指標である10年物国債利回りは米東部時間16日午後、一時前日比約0.07%高い4.29%台まで上昇(債券価格は下落)した。2022年10月以来、およそ10カ月ぶりの高さとなった。10年物の物価連動債が示す実質金利は2009年8月以来、約14年ぶりに1.95%を超えた。

金利を押し上げたのが、FRBが16日に公表した7月25〜26日の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨だ。要旨は「大半のFOMC参加者はインフレ率が上振れするリスクがかなりあり、その場合はさらなる金融引き締めが必要になるかもしれないとみていた」と説明。物価高が沈静化しない事態への警戒感がFRB内部で強いことを示した。

米国の消費者物価指数(CPI)の前年同月比伸び率は22年6月に9.1%を付けた後、徐々に鈍化してきたが、直近23年7月分は13カ月ぶりに加速した。要旨によると何人かのFOMC参加者が「家賃を除くサービス価格に、インフレ圧力の明白な低下がまだみられない」と述べた。

根底にあるのは米経済の力強さだ。FRBの事務方は3月会合から「23年後半の景気後退局面入り」を予測し続けてきたが、7月会合でその見通しを撤回した。個人消費が想定を上回る堅調さを見せているためだ。失業率も低水準で推移し、FRBは経済の軟着陸(ソフトランディング)に自信を深める。

22年3月から続くFRBの利上げ局面は終盤にある。市場では利上げがあるとしても年内にあと1回で、すでに打ち止めになっているとの見方も少なくない。インフレ率が一段と落ち着いていくのにあわせ、24年にも利下げに転じるとの見方が市場参加者の間で優勢だ。

FOMC参加者が危惧するようにインフレが収束していかなければ、金融政策の転換シナリオの前提が揺らぐ。7月中旬時点で24年3月ごろの利下げを織り込んでいた金利先物市場では現在、利下げ時期が24年半ばへ先送りとなった。

ただ、議事要旨の内容は引き締めに積極的な「タカ派」一辺倒というわけでもなかった。「リスクはより二極化している」との意見は多く、これまでの利上げの影響が時間差で表れ、今後の景気悪化を招きうることへの警戒感もにじむ内容だった。

「事務方もFOMC参加者も経済の先行きに確信を持てていない」。米JPモルガン・チェースのチーフ米国エコノミスト、マイケル・フェローリ氏は指摘する。「我々と同様、データを待つほかない」として、今後の金融政策には見通しにくさが残ると指摘した。

米国の高金利によるひずみはすでに生じ始めている。日米金利差の拡大が意識されて円相場は16日、1ドル=146円台まで下落。昨秋に政府・日銀が為替介入を実施した際の水準を下回るところまで円安・ドル高が進んだ。ドル高はグローバル展開する米国企業の収益をむしばむ要因ともなる。

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