1)ダウ工業株30種平均は小幅に6日続伸。
2)朝方発表の12月の米個人消費支出(PCE)物価指数が前年同月比4.4%上昇と、
前月(4.7%)から伸びが鈍った。
3)インフレ減速で米連邦準備理事会(FRB)が今春にも利上げを停止すると
の期待が買いを支えた。
4)インフレのピークアウト感が広がり、市場ではFRBがあと2回の利上げで
打ち止めにするとの見方が強まっている。
5)FRBの政策リスクが相対的に低下する中、米景気の動向が株式相場の
焦点となる。
6)バンク・オブ・アメリカのマイケル・ハートネット氏は「あらゆる先行指標
が米景気のハードランディングを示唆している」と主張する。
7)代表的な指標である景気先行指数は12月に前年同月比6.0%低下した。
同指数が5%超低下して景気後退に陥らなかったことは過去にない。
8)26日発表の2022年10〜12月期の国内総生産(GDP)は、
実質で年率2.9%増と潜在成長率(2%弱)を上回る伸びを記録した。
9)だが、中身をみると決して強いとはいえない。各項目の寄与度では
在庫投資が1.5%増と全体の半分強を占めた。
10)在庫や純輸出、政府支出などを除いた国内の民間最終需要は
0.2%増にとどまった。
11)20年4〜6月期以来の低さだ。
12)FRBの金融引き締めが効きやすい住宅投資や設備投資が急減速する一方、
堅調な個人消費が民間最終需要を一手に支えている。主要企業の10〜12
月期決算でもその傾向がみえる。
13)26日夕に決算を発表した半導体最大手のインテルは売上高が
前年同期比32%減り、最終赤字に転落した。企業のIT(情報技術)投資削減が響いた。
一方、クレジットカードのアメリカン・エキスプレスは23年12月期の業績見通しが
市場予想を上回った。同社のスティーブン・スクエリ最高経営責任者(CEO)は27日、
「消費は本当に強い。景気後退の兆候は見えない」と米メディアで述べた。
14)エバコアISIの27日の集計では、米主要500社で第4四半期決算(主に10〜12月期)を
発表した137社の売上高は前年同期比5.6%増、利益は2.4%減だった。
15)市場予想をそれぞれ0.8%、2.1%上回った。全体としては
「懸念していたほど悪くはない決算」といえる。
16)米株相場は27日まで6日続伸。米証券ミラー・タバックのマシュー・マリー氏は
「ひどい決算を予想していたから、そうでない限り買いということのようだ」
と投資家心理を推測する。
17)投資家はある程度の景気後退は予想しつつ、FRBのタカ派姿勢が和らげば軽度な
景気悪化で済むのではないか、と瀬踏みしながら買い進めている。
18)だが楽観はできない。実質個人消費は10〜12月期は増えたが、月次では11月、
12月と2カ月連続で小幅のマイナスだった。ウェルズ・ファーゴのティム・キンラン氏は
「この流れでは、1〜3月期の個人消費がプラスを達成するのは非常に難しい」とみる。
そうなれば米景気は支えを失う。
19)FRBは利上げを止めても当面は高金利を維持する見通しだ。かつての景気悪化局面と異なり、
機動的な利下げは期待できない。景気への逆風が続く限り、相場が底入れしたとみるのは
まだ早計と思える。