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日銀、10年国債の「貸し出し」厳格化 空売りに対抗

日経新聞より引用

日銀は27日、保有する10年物国債の一部銘柄を金融機関に一時的に貸し出す際のコストを引き上げた。対象となる銘柄の貸出量も制限した。国債を貸し出す条件を厳しくして、空売りを抑制する狙いがある。市場の流動性低下を招くおそれはあるものの、長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正・撤廃などを見込んだ投機的な売り仕掛けの抑制を優先した形だ。

今回の措置は、金融機関の求めに応じて国債を貸し出す「国債補完供給」で運用を一部見直すというもの。新発10年債を含む「カレント3銘柄」のうち、需給が著しく引き締まると懸念される銘柄が対象となる。日銀は運用の見直しを27日から適用すると、16日に発表していた。

国債補完供給は、金融機関が市場での国債調達が難しくなった場合に日銀が保有銘柄を一時的に貸し出す仕組み。形式上は「買い戻し条件付きの国債売却」だ。大規模な金融緩和の長期化で日銀の国債買い入れ額が膨らむなか、市場機能や流動性に配慮する目的で実施している。

品貸し料引き上げ、量も制限

日銀が27日から適用したのは、一部の銘柄を対象に①貸し出す際の「最低品貸し料」を引き上げる、②必要に応じて貸し出す量を制限する――という2点だ。最低品貸し料は、従来の0.25%から「原則として1%」とする。銘柄ごとの貸し出し上限額は、通常は「日銀保有残高の100%」とするが、品貸し料を引き上げた銘柄については上限を引き下げる。いずれも、国債補完供給の利用をしにくくする措置といえる。

見直し初日の27日、日銀は10年カレント3銘柄のうち367回債と368回債で品貸し料の引き上げと、貸し出し上限の引き下げを実施した。この2銘柄の日銀保有額は、発行額の100%を超えている。日銀が大量保有に至った背景には、日銀の政策修正を見込む空売り勢の存在がある。

日銀が市中残高の大部分を保有しているため、空売り投資家の注文を受けた証券会社などのマーケットメーカーは国債を調達するのに国債補完供給を頼らざるをえない。結果として、国債補完供給の継続的な利用を前提とした空売りポジションの構築が蓄積する。空売り勢が売却した国債の買い手となった市場参加者が日銀の指し値オペに応札する循環が生まれ、日銀の保有残高は発行額の100%を超えることとなった。

国債補完供給の本来の目的は、市場に流動性を供給して円滑な決済を確保することだ。品貸し料の引き上げなど一連の措置を通じて「補完供給の趣旨に即した利用を促す」(金融市場局)狙いがあると説明する。

買い戻し誘発か、売り残存か

今回の措置が適用された2銘柄は、今後どうなるのか。27日午後時点の利回りは367回債が0.365%、368回債が0.250%と、日銀の許容する変動幅の上限である0.5%を下回って推移している。仮に品貸し料の引き上げによる空売りコストの上昇を投機勢が嫌気すれば、買い戻しを誘発する可能性がある。

みずほ証券の丹治倫敦氏は17日付のリポートで、10年債を利回り0.5%、品貸し料1%で空売りするコストを考慮した場合でも「10年金利がおおむね0.16%以上上昇すれば、債券価格の下落に伴う利益で売り持ちコストを相殺できる」と指摘する。

YCCが撤廃された場合の金利上昇を踏まえ、空売りコストが多少かさんでも利益が得られると考えれば、大規模な空売りは残存しうる。ある外資系証券のストラテジストは「既に1%よりも高いコストを支払って空売りする投資家もいる。品貸し料引き上げの影響は限定的だろう」と話す。

今後の注目点は、日銀が補完供給で2銘柄を貸し出す量を一段と絞るかどうかだ。貸し出し上限を極端に減らせば、金融機関は日銀に手数料を支払い、日銀が買い戻すはずだった額の全額または一部を減らす「減額措置」の利用を迫られる。こうした可能性が警戒され、両銘柄の市場調達コストが一段と大きく上昇すると、空売り勢の士気が下がる可能性はある。だが、再びYCCを巡る思惑で投機売りが膨らんだ場合は「さらなる品貸し料の引き上げなど追加措置が講じられる」(国内証券のストラテジスト)との見方もある。

〔日経QUICKニュース(NQN) 田中俊行〕

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