円売り・株買いの「植田トレード」が再燃している。24日の外国為替市場では円相場が一時1ドル=141円80銭程度をつけ、前週末21日の朝方から2円ほど円安・ドル高が進んだ。東京株式市場では日経平均株価が急反発し、前週末比396円69銭(1.23%)高の3万2700円94銭で取引を終えた。日銀の金融政策決定会合を前に、市場では政策修正への警戒が急速に後退。日銀の「ハト期待」を支えにした取引が活発になっている。
24日は日経平均の上げ幅が一時450円を超えた。日産自動車が4%上げて年初来高値を更新したほか、11時の決算発表で通期の利益予想を上方修正した三菱自動車は一時9%上げた。業種別日経平均の上昇率では「車」のほか「鉄鋼」や「精密」などが上位に並んだ。円安・ドル高の進行が支えとなり、主力の輸出関連株が買われた。
円安・株高のきっかけは日銀の政策修正を巡る観測だ。21日の夕方にロイター通信などが、日銀が27〜28日に開く金融政策決定会合で長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正を見送る方針と相次いで伝えた。外為市場で1ドル=141円台まで円安が進み、日経平均先物も大幅高となった。
24日の東京市場でも輸出採算の改善期待から自動車株や機械株に買いが入った。米株の好調さも日本株の押し上げ要因となっている。ダウ工業株30種平均は21日まで10日続伸し、主要な半導体関連株で構成するフィラデルフィア半導体株指数(SOX)は1%近く上げていた。
一方、24日は銀行株は売られた。三菱UFJフィナンシャル・グループは2%下げ、業種別でも「銀行」は0.6%安となった。緩和修正で金利が上がれば収益が改善するとの期待が遠のいたためだ。CLSA証券の釜井毅生エグゼキューション・サービス統括本部長は「マーケットのポジションはほとんどが日銀の政策維持に傾いている」と話す。
もっとも、サプライズ的な緩和修正の可能性が消えたわけではない。ある外資系証券のトレーダーは「『YCC維持』の報道には臆測も含まれているとみられ、完全に安心は出来ない」と警戒する。モルガン・スタンレーMUFG証券の山口毅チーフエコノミストは24日付のリポートで、政策修正を先延ばしにする方が市場への悪影響が大きいとして「依然として7月会合でのYCC運用修正を予想する」との見方を示した。
植田日銀への「ハト期待」で再燃した「植田トレード」。修正があるのかないのか、金曜日の昼ごろに結果が出るまでは、マーケットは神経質な値動きが続きそうだ。