外国為替市場で円相場の上値の重さが目立っている。日銀の黒田東彦総裁の後任への起用が伝えられる植田和男氏が拙速な金融引き締めに慎重な見方を示したことで、日銀人事を巡る円買い・ドル売りは一服した。さらに米国では景気後退懸念を払拭するような底堅さをみせる経済指標が利上げの長期化観測につながり、円相場の上昇余地を狭めている。
雇用、消費……予想上回る米経済指標
1)円高・ドル安が失速したのは米国側の影響も大きい。
2)国では景気が意外な底堅さをみせている
3)FRBによる積極的な金融引き締めが長引くとの見方が強まっている
4)米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)のニック・ティミラオス記者は12日の記事で「『着陸しない』
5)成長の再加速論が出てくるほど米経済に対する悲観的な見方は和らいでいる。
6)FRBが利上げを決めるうえで重視する経済データも上振れが目立っている
7)経済指標の実績値と市場予想の乖離(かいり)を指数化した米国のエコノミック・サプライズ指数は10日時点でプラス24.1だ。
8)同指数はプラスだと市場予想を上回った経済指標が多かったことを示す。
9)1月18日(マイナス24.7)を底にして急回復し、2月8日には約4カ月ぶりの高水準となっていた。
10)1月の米雇用統計では雇用者数の伸びが50万人超と予想外に上振れ
11)最近では10日発表された2月の米消費者態度指数(ミシガン大学調べ)も市場予想より改善した。
12)「FRBの利上げは10月まで続き、政策金利の最終的な到達点(ターミナルレート)の5%超を市場で織り込みつつある」と指摘する。
正副総裁候補の所信聴取に注目
1)FRBは3月21〜22日に開く米連邦公開市場委員会(FOMC)で参加者らの政策金利見通し(ドットチャート)を公表する。
2)前回2022年12月に公表した見通しでは、予想の中央値で23年末時点では5.1%程度だった。
3)このまま米経済指標の上振れが続いて「ドットチャートが上方修正されれば、今秋までの利上げ継続を織り込んで円相場は135円まで下落する可能性がある」
4)もちろん、円安・ドル高が一方向で進むとは限らない。
5)日銀の新総裁候補とされる植田氏の政策姿勢に関し、「今のところ(見極める)決め手がない」
6)24日に予定される正副総裁候補に対する国会での所信聴取の内容によっては円高・ドル安が再発する可能性はある。
7)しかしFRBがインフレ退治を優先しても米経済の再加速というシナリオが実現すると、円安・ドル高への揺り戻しも想定されそうだ。