投資情報ななめ読み

FX取引、2年連続で1京円超え 個人「逆張り」に回帰

日経新聞より引用

日本の個人による外国為替証拠金(FX)の取引額が2023年も1京円を超え、2年連続で大台に乗った。円安進行の流れに逆らう「逆張り」に動いた投資家が多く、円買い・ドル売りの取引が円安の加速を食い止めた。FX取引が東京外国為替市場全体の2割を占めるとの試算もある。24年も相場を動かす原動力の一つとなりそうだ。

金融先物取引業協会のデータによると、23年の年間取引金額が1京2000兆円弱に達した。22年は年間で1京2000兆円強で、2年連続で1京円を超えた。

多くのFX投資家は手元資金よりも運用額を大きくする「証拠金倍率(レバレッジ)」を活用しており、「平均にならすと10倍前後で投資している人が多い」(外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長)。そのため、実際に投資家が必要とする資金は取引額よりも少ない。

取引金額の大部分は数秒から数分で高速売買を繰り返す投資家が大半を占めており、FX取引全体で実際の投資額がいくらかを計算するのは難しいという。現在、国内では金融庁がレバレッジの上限を25倍としている。

ただ、FX勢が為替市場にも一定の影響力を持つのは確かだ。

個人から注文を受けた国内FX業者の多くはいったん自社内で売りと買いの注文を相殺させ、相殺しきれなかった注文だけを大手銀行につなぐ。FX業者が自身の抱える為替変動リスクを減らすために行うこうした「カバー取引」が、為替市場に円安・円高圧力となって表れる。

日銀が公表する東京市場の取引データによると、ドルと円のスポット取引の規模は23年時点で1日平均45.7億ドル(約6700億円)だった。国内のスポット市場に占める個人投資家関連の取引は22年4月時点で17.9%に達していたという日銀の調査もあり、23年も同水準だったと仮定すると、1日に8億ドルほどFX勢の圧力がドルと円の市場に及んでいた計算になる。

通貨ペアでみると23年はドルと円の取引が最も大きな割合を占め、全体の84%を超えた。22年の75%を上回り過去最高の取引比率を記録した。中でも、23年はドル売り・円買いの取引が増えた点が特徴的だった。

22年は10月に1ドル=151円90銭台まで円安が進む中、FX勢はドル買い・円売りの取引に走った。「米利上げが止まらない中、安心して円を売れた」(静岡県在住の80代男性投資家)。同協会のデータによると22年の円の売越額は1カ月あたり8500億円を超え、相場の流れに乗る「順張り」の姿勢が優勢だった。

この傾向が23年は逆転した。円高への回帰を見越して円を買い越す基調に転じ、23年は1カ月あたりの円の買越額は1000億円に迫った。「特に秋ごろは政府・日銀の為替介入が怖くて、円を売りたくても売れなかった」(三重県在住の30代男性投資家)事情もある。

年初の1ドル=127円台から11月に1ドル=151円台後半を付けるまで10カ月以上もかかり、「FX勢の『逆張り』行動が円安進行のペースを遅らせ、相場の変動を抑えた」(神田氏)。22年の円安進行時は、5月末の127円台から5カ月足らずで151円台後半まで円安が進んでいた。

店頭FX業者4社(GMOクリック証券、外為どっとコム、マネックス証券、セントラル短資FX)の24年1月17日時点のデータでは、FX勢は3週連続で円に対してドルを売り越している。売り越し幅は2カ月ぶりの水準まで膨らんでおり、1ドル=148円台まで円安が進む中でドル売り・円買いを増やしてきた「逆張り」傾向が足元でも確認できる。

もっとも、円安進行下でドル売り・円買いを仕掛ける「逆張り」は投資家にもリスクが大きい。セントラル短資FX市場業務部の富永貴之専任部長は「円買いを仕掛けた個人の含み損が、想定外の円安進行で膨らむ場面もあった」と振り返る。

日米の短期金利差が開いた現状でドル売り・円買いの持ち高を翌日以降に持ち越すと金利差に相当するスワップポイントの支払いが生じ、ドル買い・円売りよりも含み損が膨らみやすい事情がある。含み損が一定水準を上回りFX勢が反対売買を余儀なくされると、円安の加速を後押しすることになりかねない。

「円安のニュースを見る機会が増えて、ずっと気になっていた」。東京都在住の20代女性は24年、FX取引を新たに始める予定だという。投資家の裾野が広がる中でFX勢の存在感は高まっている。今年も彼らの投資姿勢が相場に影響を与える展開が続きそうだ。

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