日経新聞ななめ読み
量的引き締めとは
1)FRBは4月6日、3月に開いたFOMCの議事録を公開した
2)金融政策の決定権がある全参加者が量的引き締めについて「早ければ5月」
3)FRBは3月の会合で利上げを再開したばかり、引き締め圧力が一段と高まる
4)量的引き締めとは、米国債などの保有資産をFRBが段階的に圧縮して市場の資金量を減らすこと
5)FRBは新型コロナウィルス禍が深刻になった20年3月に、米国債などを大量購入して資金供給する量的緩和を実施した
6)保有資産量は2年で4兆ドルから9兆ドルに増大したが、量的引き締めは巻き戻しになる
7)4/6に公表した議事録によると5月の次回会合量的引き締めを決定すれば保有資産は最大で月950億ドルずつ減っていく
8)資産圧縮は米国債と住宅ローン担保証券
9)債権市場からFRBという最大の買い手がいなくなるため、金利には上昇圧力がかかることになる
利上げを再開したばかりでなぜ
1)FRBは3月にゼロ金利政策を2年ぶりに解除し政策金利を0.25%引き上げたばかり
2)22年中に政策金利をさらに1.5%引き上げる方針を示唆
3)利上げと同時に資産縮小を進めれば、金融市場は2重の引き締めという異例の状態になる
4)ロシアのウクライナ侵攻で金融市場は揺れており米国の金融引き締めは世界景気の不安要素となる
5)にもかかわらず、FRBが二重の引き締めに動くのは、米国のインフレが深刻だから
6)CPI上昇率は2月時点で前年同月比7.9%まで高止まり、40年ぶりという歴史的な水準
7)住宅価格も2年で3割上昇するなど資産取引の加熱も目立つ
8)パウエル議長は3月の記者会計で高インフレが食料、住居、交通などの必需品のコスト増に対応できない人々に大きな苦難を強いている
世界経済や日本経済への影響
1)量的引き締めは米長期金利の上昇を促すことになる
2)FRBは9兆ドルある保有資産をどこまで減らすか現時点で明らかにしていない
3)米ゴールドマンサックスは25年までに6兆ドルまで減るとの予測を示している
4)資産圧縮が3兆ドル規模になればどのくらいの金利上昇圧力になるだろうか
5)参考になるのが前回の量的緩和(08〜14年)時のFRB自身の分析
6)前回は資産量を9000億ドルから4兆5000億ドルまで3兆6000億ドル分膨らませた
7)その際、長期金利を1%、押し下げる効果があった
8)5月以降の量的引き締めは前回の量的緩和の正反対に近い量となり、長期金利は1%の上昇圧力がかかる可能性がある
9)米10年物国債利回りは足元で2.6%程度だが、FRBの引き締めで長期金利はさらに上昇する可能性がある
10)コロナ禍で世界債務は国内総生産比350%まで膨れ上がり、金利上昇はかつない脆弱だ
11)政府部門も企業部門も利払い負担が増大し、市場が不安定になる懸念が拭えない
12)米金利が上昇すれば、利回りが見込めるドルに世界のマネーが還流してドル高も定着しそう
13)円相場は3月末に一時1ドル125円台と約6年ぶりの安値をつけた
14)円安ドル高の流れがさらに強まるようなら原油などの輸入物価がさらに上昇して国内景気にも負の圧力となる