「米欧需要減る」予測も
財務省が16日発表した2月の貿易統計で、貿易赤字は8976億円となった。19カ月連続の赤字で、2月としては比較可能な1979年以降で最大の赤字額だった。輸入の伸びが輸出を上回り、輸出は数量ベースでの落ち込みも目立つ。世界経済の減速を受け、赤字の解消は難航しそうだ。
2月の貿易統計で、輸入は前年同月比で8.3%増の8兆5523億円だった。石炭や液化天然ガス(LNG)が増えた。前年比で為替レートは14%の円安となり、ドル建ての原油価格も前年を上回っている。
輸出は米国向けの自動車などが伸び、6.5%増の7兆6547億円だった。全体としては輸入の伸びが上回り、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は赤字が拡大した。
資源高や円安が一服するなか、赤字の縮小を難しくする要因のひとつが輸出の低迷だ。貿易統計をもとに内閣府が算出する輸出数量指数(季節調整値)は2022年10月をピークに前月比で減少傾向にある。
23年2月は前月比で3.5%上昇となった。1月は中国の春節による休暇で輸出が落ち込んでいた。その反動も出たとみられる。2月の指数は22年10月と比べて6.7%低い水準にとどまっている。
地域別では米国、欧州、アジア向けがいずれも輸出数量で10月と比べて5~10%少なくなっている。前年同月比の品目別では、米国向けは原動機や電算機、欧州向けは自動車部品、中国向けは自動車や半導体電子部品などが落ち込む。
米欧はインフレ対応の利上げで景気の先行きが不透明になっている。中国は新型コロナウイルス禍の混乱の影響が残り、世界的な半導体需要の低迷も輸出にはマイナス要因となる。
第一生命経済研究所の大柴千智氏は「景気が上向き始めている中国向けは持ち直しが期待できるが、米欧の落ち込みで輸出全体も低迷が続く」と予測する。