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米シリコンバレー銀行破綻、FRBの利上げに影

日経新聞より引用

【ニューヨーク=斉藤雄太】米銀シリコンバレーバンク(SVB)の経営破綻はインフレ退治をめざす米連邦準備理事会(FRB)の利上げの行方に影を落としそうだ。金利の急上昇が銀行預金からの資金流出を招き、債券運用の損失が打撃になる潜在的なリスクは他の銀行も抱えている。FRBは金融システム安定への配慮を強めながら一段と難しいかじ取りを迫られる。

10日の米債券市場では政策金利の動向に敏感な2年物国債利回りが前日比で一時0.3%ほど下がり(債券価格は上がり)4.5%台後半を付けた。この2日間で0.5%近い急低下となった。

米金利先物市場では21〜22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で0.5%の利上げに踏み切るとの予想が10日夕時点で4割未満となった。FRBのパウエル議長が7〜8日の議会証言で、今後のデータ次第で利上げを再加速する用意があると発言した後は同様の予想が7割を超えたが、足元で大幅利上げ観測は後退している。

金利低下の一因となったのは10日発表の2月の米雇用統計だ。就業者数の伸びが市場予想を上回る一方、失業率や平均時給は予想を下回り、利上げ加速を促す内容ではなかったと受け止められた。さらに市場で広がったのは「最近の銀行業界の混乱はFRBに、より小幅な利上げによる忍耐強い(インフレ)対応を促す」(米運用会社ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント)との見立てだ。

SVBは主な顧客のスタートアップやベンチャーキャピタル(VC)からの預金引き出しが殺到し、資金繰りに行き詰まった。破綻前には金利上昇で含み損を抱えた長期債を売却し、短期債への再投資や資本増強で財務を立て直す計画を描いたがこれも頓挫した。SVBの顧客や資金調達・運用先の特殊性が招いた破綻という色彩が強い。

ただ金利が急上昇するなかでMMF(マネー・マーケット・ファンド)などの相対的な利回りの魅力が増し、預金から資金が流出する銀行が増え始めているのも確かだ。米連邦預金保険公社(FDIC)によると、米銀全体で抱える債券の含み損は2022年末時点で約6200億ドルと1年前の約80億ドルから急拡大した。昨年来の急速な金融引き締めで突発的なショックに対する金融システムの脆弱性は増している。

10日午前にはイエレン米財務長官がSVBの経営問題に関連して「銀行に財務上の損失が生じるのは懸念すべき問題だ。非常に注意深く監視している」と語った。同日にはFRBが米国に拠点を置く国内外の銀行に緊急の聞き取り調査を実施したことも明らかになった。関係者によると、預金や資本の状況、債券の保有状況や売却予定などを確認しており、当局側の警戒感の高まりを映す。

「SVB破綻を引き金に金融システムに危機が連鎖していく雰囲気はない」。ある中銀関係者はこう指摘しつつ「景気・物価だけを気にして利上げを考えられる状況でもなくなり、FRBは(金融政策を)やりづらくなった」とみる。

インフレ圧力は根強く一段の利上げが必要との認識を多くのFRB幹部が共有するなか、金利上昇が銀行経営に与える負荷の大きさを再評価する機運も高まった。FRBのウォラー理事らはこれまで、金融引き締めの手綱を緩めるのではなく銀行監督などプルーデンス政策を通じて金融システムの安定をめざすべきだと主張してきたが、利上げ路線の行方は見通しにくくなっている。

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