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沈む円の購買力、過去最低水準 欧州ワイン2割値上がり

日経新聞より引用

円の購買力が下がっている。円の総合的な対外購買力を示す実質実効為替レートは変動相場制移行後で過去最低水準に沈み、値上がりの波がエネルギー関連などから欧州からの輸入品などに広がる。日銀が主要国で唯一、金融緩和を維持していることで、幅広い通貨に対して円安が進んだためだ。消費者の負担増というデメリットが無視しにくくなってきた。

欧州産を中心に700〜800種類のワインを取り扱う「エクシヴァン西武池袋本店」(東京・豊島)。同店では、消費者の人気が高いフランス・ブルゴーニュ地方産の「ジェイモローエフィスシャブリ」(750ミリリットル)が1本4950円と1年前に比べて1100円値上がりした。

ユーロ高や、東南アジアなどとの仕入れ競争の激化が背景にある。このお店ではワイン1本あたりの店頭価格が2022年比で15〜20%上昇した。ソムリエとして接客する後藤裕之氏は「購入本数を減らしたり、以前買っていたものよりも安い商品に切り替えたりする消費者が目立つ」と明かす。

ワインのほか、欧州からの輸入品は食卓を彩るものが多い。全国のスーパーの販売データを集める日経POS(販売時点情報管理)情報をみると、欧州産のチーズの売れ筋は1年前と比べ11%価格が上がり、乾燥パスタは23%の値上がりだ。

価格競争が飲料や食品ほど激しくない高級品では、値上げの動きはこれよりも急激だ。

例えば高級時計。スイス時計大手のスウォッチグループ傘下の「オメガ」では人気シリーズの「ムーンウォッチ」の主力モデルは、直営店での店頭価格が100万円の大台に乗った。1年前と比べると2割を超える値上がりだ。21年1月時点では73万7000円で、その時と比べると4割近く上がっている。

欧州車にも影響は及ぶ。ステランティスの日本法人は、「プジョー」ブランドの「208GT」シリーズを現在、362万円(車両本体)で販売する。1年前から1割上がった。

相次ぐ値上がりは為替の円安による購買力低下が影響している。金融引き締めを続ける各国・地域の中央銀行に対して日銀の緩和方針が際立っており、円安が進む。足元では対ドルの円相場が1ドル=143円台後半まで下落し、22年11月以来7カ月ぶりの円安・ドル高水準を付けた。

対ドルでの価値の低下に加えて、ユーロやスイスフランなど欧州の通貨に対しても円は下落し、購買力が落ちた。

円の様々な通貨に対する総合的な購買力を示す指標としては、実質実効レートがある。低いほど海外の製品やサービスを買う際の円での負担が大きいことを示す。

国際決済銀行(BIS)によると、5月の円の実質実効レート(2020年=100)は76.2だった。前月比で2%下がった。日銀の推計では1973年の変動相場制移行後、最も低い水準を脱しきれていない。

実質実効レート低下は購買力の低下を招く半面、輸出や訪日外国人消費には追い風となりやすい。日本経済全体として円安はプラスかマイナスか――。円安効果を巡って議論は尽きない。

東短リサーチは人口100万人以上の先進国を対象に過去10年間の実質実効レートの変化と実質成長率を調べた。日本は実質実効レートの下落率が最も大きかったにもかかわらず、成長率はワースト2位だった。

東短リサーチの加藤出社長は「円安は消費者の負担増という負の影響の方が大きいことを示唆している」と指摘する。

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