投資情報ななめ読み

個人はやはり「円キャリー」 対ドルで円売り継続

日経新聞より引用

外国為替証拠金(FX)取引を手掛ける個人投資家の円売り・ドル買い圧力が根強い。日本政府・日銀による円買いの為替介入の観測があった5月初め以降、円相場は1ドル=153〜156円台を中心におおむね安定している。相場の変動率が下がれば金利差が物を言う。このため海外の投機筋に限らず、日本の個人も低金利の円を売って高金利の通貨を買って利息収入を積み上げる「円キャリー取引」に動きやすくなっている。

QUICKが20日に算出した店頭のFX取引5社の建玉状況によると、「ドル・円」取引の総建玉に占めるドル買い比率は前週末17日時点で61.6%と、前の週末から1.9ポイント上昇した。1年1カ月ぶりの高水準となった3日時点(64.8%)には及ばないものの、3週連続でドル買いがドル売りを上回ったことになる。

日本のFX取引の主流は一定のレンジを決めて相場の流れに逆らう「逆張り」取引だが、伝統的に円キャリーへの需要が根強い。相場の変動率が落ち着けばキャリー継続への安心感が広まる。

前週の円相場の高値と安値の差は3円少々と、日本政府・日銀の介入観測があった4月29日の週(8円強)の半分程度にとどまった。ハイライトは4月の米消費者物価指数(CPI)が前月比で市場予想を下回った15日の海外市場と、その延長線上にあった翌16日の東京市場だ。米長期金利の低下とともに円買い・ドル売りが進んだものの、逆張り志向をもつFX勢は「円売りの好機」とばかりに円売りを膨らませ、円の上昇を阻んだ。

FX大手の外為どっとコムによると、ドル買い比率が前週で最も高かったのはその15日だ。米CPI後の円高は長引かないとみたFX投資家の円売り意欲がいかに強かったかがわかる。

外為どっとコム総合研究所の宇栄原宗平氏によれば、米CPIで「家賃を除くコアサービス価格(スーパーコア)」の上昇が続いていたことから、FX取引を手掛ける個人の一部は「米利下げを織り込むのは時期尚早」と判断した。そのため利下げ期待に沸いた米株式市場とは対照的に、ドルの買い持ち高を増やそうとの機運が高まったという。 米株高などで余力ができた投資家が円売りに傾斜しやすい構図にもなっている。

円キャリーの需要は対米ドル以外でも強まっている。20日の東京外為市場では円が対ニュージーランド(NZ)ドルで一時1NZドル=95円台半ばと2007年以来17年ぶりの安値をつけた。オーストラリア(豪)ドルに対しても一時は1豪ドル=104円台半ばと、4月29日につけた11年ぶりの安値に迫る勢いだ。 新興国通貨ではメキシコペソに対して久しぶりの円安水準をつけている。

セントラル短資FXの水町淳彦市場業務部長は、「個人投資家は円安のエネルギーはまだ残っているとみている」と解説する。円買い介入を期待して円の買い持ちにする戦略は健在だが、投機筋が介入警戒感から円売りを自重しているため人気は低下気味だ。そんななか、ボラティリティーの低位安定を背景にしたFXのキャリー取引は高水準を保つ公算が大きい。

短期トレード向きの「DMM FX」

-投資情報ななめ読み