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タカ派発言、視線は統計に

日経新聞より引用

7日の米株式市場でダウ工業株30種平均は大幅に反落し、前日比574ドル(1.7%)安の3万2856ドルとなった。米連邦議会上院の銀行・住宅・都市問題委員会で証言したパウエル米連邦準備理事会(FRB)議長の発言内容が「タカ派寄り」と受け止められ、景気減速懸念から幅広い銘柄に売りが広がった。

パウエル氏の証言が始まったのは米東部時間午前10時。経済に対する現状認識を示す議会証言の場で、同氏は冒頭に「利上げのペースを加速する用意がある」と発言した。1月の雇用統計や消費関連の指数が堅調だったと説明。「直近の経済データは予想を上回る強さとなり、最終的な政策金利の水準が従来の予想よりも高くなる可能性がある」と踏み込んだ。

この発言の直後から市場は反応し、株価はほぼ右肩下がりの展開になった。ハイテク株中心のナスダック総合株価指数も1.2%安で引け、S&P500種株価指数は1.5%下げた。

注目されていた「パウエル発言」で利上げ加速の可能性が示唆され、一気に景気後退懸念が広がった。債券市場では金融政策の影響を受けやすい2年債利回りが5%と2007年以来の高水準にまで上昇。10年債はほぼ横ばいで2年債利回りが10年債を上回る「逆イールド」が深まった。

ダウは製薬大手メルクを除いた全銘柄が下げた。特に利上げを警戒して下がったのが金融銘柄だ。景気停滞と利ざや縮小の懸念より、ウェルズ・ファーゴが5%近くまで下落し、バンク・オブ・アメリカやゴールドマン・サックス、JPモルガン・チェースはそれぞれ約3%下落した。

景気動向によって業績が変化する景気敏感銘柄も下げた。建機大手のキャタピラーが3%安、航空機のボーイングは約2%安で引けた。工業製品・事務用品のスリーエム(3M)は2.5%下げた。

見逃せないのは消費銘柄の動きだ。小売り分野では食品など必需品はインフレ下でも消費者の購買が続く一方、衣料や家電などの必需品以外は購入が減退している。業績も二極化しているが、この日はほとんどの銘柄が下がった。日用品のプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)が約2%安、薬局大手ウォルグリーンが3.7%安だった。米小売り大手ウォルマートは1%安、百貨店大手メーシーズは2.5%安だった。

「まだ物価安定の目標からほど遠く、米経済は最大雇用の予測を超えている」。パウエル氏は7日の証言でこう話し、失業率が上昇して利下げが来る可能性については「当面はない」と話した。労働市場の需給緩和が必要というスタンスも崩さなかった。

次回3月の米連邦公開市場委員会(FOMC)でどんな判断が下されるか。7日には利上げ幅を0.25%から再び0.5%に引き上げるとの見方も強まった。米シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)グループは7日、この確率を66%に引き上げた。前日6日は33%だった。

金融政策の先行きを巡っては今後のデータが非常に重要とパウエル氏は話した。10日に2月の雇用統計、14日には消費者物価指数(CPI)の発表が控える。少しでも数値に変動があった場合、相場は敏感に反応しそうだ。

(ニューヨーク=吉田圭織)

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