日米中銀が2024年最後の金融政策決定会合を終えた。米国は利下げ、日本は金利据え置きとの結果は市場予想通りだったが外国為替市場では円売り・ドル買いの勢いが増す。市場参加者が減る年末年始を控え、円の急落を警戒する声が強まっている。
「これまでは1ドル=160円がレンジの下限とみていたが、そうではなくなってしまった印象」。三井住友銀行市場営業部為替トレーディンググループで為替ディーラーを務める納谷巧グループ長は円相場の変化を感じ取る。
20日の外国為替市場で円相場は一時1ドル=157円90銭台と7月中旬以来5カ月ぶりの円安・ドル高水準まで下落した。
加藤勝信財務相は閣議後の記者会見で「足元で一方的、急激な動きがみられる」と指摘した。「ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)を反映し、安定推移が重要」と述べると円相場は157円前後まで押し戻された。
今回の円安進行は2人の中銀トップの記者会見が生み出した。まず連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長が18日に「(利下げの)プロセスは新たな段階に入った」と明言し、今後の利下げを慎重に進める姿勢を示した。
同日にFRBが発表したFOMC参加者の政策金利見通し(ドットチャート)では、25年の利下げは0.25%が2回になると示唆した。前回9月時点の4回から半減し、市場はタカ派と受け止めた。ドル指数は2年ぶりの高値をつけた。
ふくおかフィナンシャルグループの佐々木融チーフ・ストラテジストは「今回のFOMCが利下げ終了や先々の利上げが意識されるきっかけになった可能性がある」と指摘する。
日銀の植田和男総裁の記者会見でのキーワードは「もうワンノッチ(1段階)ほしい」だ。利上げ判断に至るまでに米トランプ次期政権の政策の影響や賃金の動向を見極めたい考えを強調した。
追加利上げへの慎重さを感じ取ったヘッジファンドなどは円売りに動いた。会見直前に1ドル=155円台で推移していた対ドルの円相場は会見後の午後5時には157円台まで下落。ソニーフィナンシャルグループの尾河真樹チーフアナリストは「日米金利差が想定より縮まらないとの見方から円売り・ドル買いが加速した」と分析する。
日銀の植田総裁の記者会見で円安が進行。市場参加者が休暇に入り流動性が減っていく。足元の状況は政府・日銀による円買い介入があった4月末と重なる。野村証券の後藤祐二朗チーフ為替ストラテジストは「年始にかけて再び1ドル=160円を探る展開も十分考えられる」とみる。
りそな銀行で為替ディーラーを務める広兼千晶クライアントマネージャーは「市場では160円を超えるまでは当局が介入しないと見て円売り圧力が強まっている」と指摘する。売りやすくなった円に通貨当局が神経をとがらせる年の瀬を迎える。