外国為替市場でユーロが対ドルで下値を探っている。19日の東京市場では一時9カ月ぶりの安値となる1ユーロ=1.16ドル台後半まで下落し、20日の同市場でも1.17ドルを下回る水準で推移した。米欧の金融政策の方向性の違いに加え、ドイツを中心とした政局を巡る不透明感がユーロ相場の重荷となっている。
ユーロは対ドルで7月末の水準から1%程度下落し、2020年11月以来の安値圏にある。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「政治を巡る2つの不透明感がユーロ相場を押し下げている」と指摘する。
1つは9月に予定されるドイツの総選挙だ。長年ドイツを率いてきたメルケル首相が引退を表明しており、次の政治リーダーが決まるまでユーロ相場は不安定になるとの見方が多い。
もう1つはアフガニスタン情勢だ。陸続きの欧州に難民が大挙する懸念が浮上しており、「極右政党の台頭も含めた政治的混乱が再燃する可能性がある」(植野氏)。実際、15年にはシリアなどから100万人超が押し寄せる難民危機が発生し、政治情勢が不安定になった。
米連邦準備理事会(FRB)が量的緩和の縮小(テーパリング)を年内に実施するとの見方も、ドル高・ユーロ安を後押ししている。ドルの総合的な実力を示す実効為替レート(ドル指数)も9カ月ぶりのドルの高値圏にある。大規模な金融緩和を続ける欧州中央銀行(ECB)との方向性の違いが鮮明である限り、ユーロが対ドルで軟調になりやすいとの見方は多い。