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NYダウ、2年連続上昇 なるか「S&P493」の逆襲

日経新聞より引用

31日の米株式相場でダウ工業株30種平均は3営業日続落し、前日比29ドル安の4万2544ドルで終えた。相場の格言「掉尾(とうび)の一振」の実現には至らなかったものの、2年連続の上昇で引けた。さらなる株高を見込むウォール街が期待を寄せるのが、相場のけん引役となった巨大テック株と比べて割安さが残る「493銘柄」の動向だ。

ダウ平均は年間で13%上昇した。S&P500種株価指数も23%高だった。株高を演出したのが、エヌビディアなど「マグニフィセント7(壮大な7銘柄、M7)」に代表される巨大テック株の躍進だ。株価が2.7倍になったエヌビディアはダウ平均の年間の上昇率で首位に立った。

ファクトセットによるとS&P500の時価総額の35%をM7が占める。人工知能(AI)による需要拡大期待が追い風で構成比は23年末比で5ポイント上昇した。

M7の1株当たり利益(EPS)は3割以上増えた一方で、PER(株価収益率)は32倍と歴史的な高水準にある。JPモルガン・アセット・マネジメントのデービッド・ケリー氏は「ドットコムバブル崩壊以来の水準で、調整は時間の問題」と警戒する。

ウォール街では株高の継続はコンセンサスに近い。ゴールドマン・サックスモルガン・スタンレーはS&P500が2025年末に6500に達する青写真を描く。根拠とするのが、M7などの巨大テック銘柄から中小型銘柄への「グレートローテーション(大転換)」だ。

米連邦準備理事会(FRB)の利下げ継続や、トランプ次期大統領が掲げる減税といった「成長志向」の政策で、中小企業に追い風が吹くとの見方が根底にある。

投資尺度もこうした見方を裏付ける。S&P500からM7を除いた「S&P493」のPERは19倍。米運用会社オールスプリング・グローバル・インベストメンツの分析によると株価売上高倍率(PSR)は2倍強と、7倍に達するM7と比べて割安に放置されている。

M7の収益拡大ペースは鈍化が見込まれる一方、S&P493は増益基調が強まり、25年7〜9月には増益率でM7に匹敵する見通し。オールスプリングのブライアント・バンクロンカイト氏は「同程度の成長が見込まれる企業が売上高の2倍の評価で買えるのに、M7を7倍もの評価で買うだろうか」と話し、M7からの資金シフトに期待を寄せる。

焦点はトランプ氏の出方だ。同氏が提唱する関税や不法移民の強制送還はインフレを招き、中小企業のコスト増加圧力となる。ドル高も影を落とす。FRBが計1%の利下げに踏み切ったにもかかわらず10年物国債利回りは約0.7%上昇し、ドル指数の上昇率は通年で7%に達する。インフレが再燃し利下げペースが鈍化すれば、さらなるドル高を招く可能性がある。

こうした懸念を織り込むように、ダウ平均は12月に5.2%下落。月次ベースでは年間で最も下落率が大きく、掉尾の一振とはならなかった。

トランプ氏は「米国の産業再建」を掲げ、大統領に返り咲く。米国の産業基盤を担う中小型株への市場の期待をつなぎ留めることができるか。25年は「政策に売りなし」の格言の真価が問われる1年になる。

(ニューヨーク=三島大地)

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