金融知識

iDeCo、掛け金・年齢拡大 上限額数倍の会社員も

日経新聞より引用

税制優遇を受けながら老後資金を作る個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)が大きく拡充される。政府・与党や厚生労働省がまとめた改正案によると掛け金の上限額が数倍になる会社員もあるほか、拠出期間も5年延びて70歳未満になる方向だ。施行時期は未定だが27年春の公算がある。

確定拠出年金(DC)には原則会社が掛け金を出す企業型と、原則個人が掛け金を出す個人型(イデコ)がある。運用対象は投資信託や預貯金などだ。イデコは拠出時に掛け金が所得控除となり所得・住民税の対象外となる。運用中は非課税だ。受給時は原則課税だが負担を減らす優遇制度がある。

DC全体の上限額は現在、会社員は原則月に5万5000円。これを7000円増の6万2000円に拡大する。このうちイデコの現在の上限額は、会社が運用責任を持つ確定給付企業年金(DB)や企業型DCがある場合は月2万円(または5万5000円からDBや企業型DCの掛け金合計額を引いた額の小さい方)だ。改正後は6万2000円からDB・企業型DCの合計額を引いた額になる。例えばDB・企業型DCの合計額が月2万円なら、上限額は4万2000円になる。

企業型DCの掛け金額は一般に職位などが上がれば増えるが、1万円以下が全体の半分程度。DBは勤務先ごとに一律で計算され月1万〜2万円程度の例も目立つ。多くの会社員の場合、イデコ上限額はDC全体の拡大額である7000円よりも大きく増える。

イデコの上限額が対象者共通で特に大きく増えるのは企業年金がない会社員。月2万3000円が6万2000円へ約2.7倍になる。企業年金がない場合はイデコの重要性が特に大きいが、これまでは企業年金のある会社員との間で上限額の差が3000円しかないことが問題視されていた。

公務員もイデコ上限額は月6万2000円になる。DBにあたる金額が一律8000円とみなされているため実質的には5万4000円に拡大する。

掛け金を出せる年齢は70歳未満までに延びる。現在は公的年金加入者(最大65歳未満)であることが要件だが、改正後は過去にイデコに加入していた場合など一定条件で、公的年金加入者以外でも70歳未満まで加入できる。

改正後、活用の有無が老後資金に与える影響は一層大きくなる。40歳からイデコを始めた場合、現在の月2万円で65歳未満まで25年間4%で運用できれば、掛け金の節税効果を含めた資産は約1150万円(税率20%と想定)。一方、改正後に例えば月4万円で70歳未満まで30年運用なら約3060万円と大きく増える。

イデコは受給時は原則課税。一時金で受け取る場合には退職所得控除という非課税枠がある。会社の勤務やイデコ加入期間が20年までは年40万円、21年目以降は年70万円が積みあがっていく。これはイデコ単独の枠ではなく企業型DCや会社の退職金と共通だ。

「現在はイデコなどDCの受給年を含めて5年以内に退職金を受け取った場合は、イデコと退職金で二重には退職所得控除が使えない」(税理士の柴原一氏)。イデコは早くとも60歳以降の受給であり大半の会社は定年も退職金受給も60歳なので二重取りできない。

しかし近年、定年と退職金受給を65歳に延ばす会社が金融業界など一部で出始めた。この場合イデコを60歳で受け取れば二重取りできる。このため昨年末の政府の税制改正大綱は、イデコ受給後に退職金を受け取る場合、二重取りできない期間をイデコ受給年を含め10年以内と延ばすとした。改正は26年からで「今年までのイデコ受給は従来通り」(柴原氏)だ。

これに関しSNSなどで「改悪」との批判があふれた。ただ大和総研の是枝俊悟主任研究員は「退職所得控除の二重取りは原則抑制するのが税の考え方。ともに高額な人が過剰に有利だからだ」と話す。

実際、例えば退職金を先に60歳で受け取る場合は二重取りは制限済みだ。かつては15年以内のイデコ受給なら二重取りできない規定のもと、22年3月まではイデコ受給開始を延ばせるのは70歳までだったため不可能だった。しかし同年4月からの受給開始を75歳まで延ばせる改正により、15年のままでは二重取りが可能になるはずだった。このため規定を20年と改正し二重取りを防いだ。

今回の税控除改正も一部企業の定年延長という社会の変化が背景であり、不公平是正の側面からはやむを得ないと言えそうだ。

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