【ニューヨーク=高見浩輔】米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は7日の講演で、追加利下げについて「急ぐ必要はない」と強調した。同日朝に公表された2月の雇用統計も含め、労働市場は堅調との見方を維持した。市場はトランプ米政権の関税政策などを警戒して景気の減速懸念を強めているが、パウエル氏はまだ状況を見極める時間的な余裕があると示唆した。
ニューヨークで開かれた経済イベントに登壇した。次回の米連邦公開市場委員会(FOMC)は18〜19日に予定されており、8日から高官が対外発信を控えるブラックアウト期間に入る。
市場は次回会合での利下げ見送りを確実視している。同時に公表される経済見通しで年内の利下げ回数の予想がどう修正されるかが焦点だ。
パウエル氏は、米経済の中核をなす個人消費について「最近の指標は2024年後半の急速な成長率と比較してやや減速する可能性を示している」と指摘した。一方で労働市場は「多くの指標が堅調で、ほぼ均衡状態にあることを示している」と説明。経済は全体として「堅調なペースで成長している」と自信を示した。
関税など新政権の政策は振れ幅が大きい。パウエル氏は金融市場や消費者調査で目先の物価上昇率についての予想が上昇していることに言及し「細心の注意を払っている」とコメントした。長期的な物価上昇率の予想は安定しているとも述べた。人々の物価観は実際の価格変動に影響を与える可能性があり、FRBが重視している。
パウエル氏は関税など通商政策のほか、移民、財政政策、規制の計4分野での政策変更を見極めると説明した。先行きの不確実性は高いが、経済がまだ安定しているため「急ぐ必要はなく、より明確になるまで待つことができる」と自信を表明した。
経済が堅調さを保ち続ければ、物価抑制の進展が利下げの条件となる。パウエル氏は「インフレ率の抑制は幅広い分野で進展している」としつつ、最近の数値は依然として目標の2%を上回っていると説明。「物価上昇率を目標に戻す道のりは平たんではなく、今後もその状態が続くと予想される」と述べ、時間がかかるとの認識を示した。