投資情報ななめ読み

FRB、0.25%利上げ継続 日米市場関係者の見方

米連邦準備理事会(FRB)は22日まで開いた米連邦公開市場委員会(FOMC)で政策金利を0.25%引き上げると決めた。米中小金融機関の経営に懸念がくすぶる中でもインフレの抑制を優先した。声明文やパウエルFRB議長の記者会見などの受け止めと相場への影響を日米の市場関係者に聞いた。

利上げはあと1回で終わらず

米証券シーバート・ウィリアムズ・シャンクの債券部門のヘッド、デービッド・コード氏

FRBの利上げ決定後に米長期金利は低下(米国債価格は上昇)した。米シリコンバレーバンク(SVB)の破綻前は0.5%の利上げの観測があっただけに、今回FRBが0.25%の利上げを決めたことで市場は債券買いで反応しやすかったとみている。米銀の破綻が相次ぐ中でもFRBは利上げを決め、インフレ抑制が最重要課題であることを示した。

(FOMC参加者らによる)2023年末の政策金利見通しは5.1%で据え置かれ、年内の利上げはあと1回という見立てになる。ただ物価上昇率は依然として高く、失業率が歴史的な低水準にあるなど経済の強さを考えれば利上げは1回では終わらないだろう。金利先物市場では23年後半の利下げを織り込んでいるようだが、そういった状況になるとはみていない。22日の米金利低下も市場の過剰反応で長くは続かないだろう。

金融引き締め継続で米株売り 企業業績は底堅い

インガルズ・アンド・スナイダーのシニア・ポートフォリオ・ストラテジスト、ティム・グリスキー氏

22日の米株式相場はFOMC後のパウエルFRB議長の会見を受けて大きく下げた。金融システム不安が意識されるなか、インフレを抑制するために金融引き締めを続ける姿勢を示したためだ。確かに労働市場は依然逼迫し、インフレ率はFRBが目標とする2%にほど遠い。従来の引き締め継続路線が確認された会合だった。

株式相場は今後どうなるか予断を許さないが、投資を中断する必要はない。これまでの金融引き締めにもかかわらず米国企業の業績は底堅い。成長は緩やかになるかもしれないが、成長しなくなるとは考えていない。長期投資家にとって、相場の下落局面は将来性のある企業を探す好機でもある。

米銀行を巡る経営不安は未知の部分が多い。別の銀行が破綻する可能性も残る。ただ、規制当局は預金保護などの措置を拡大する姿勢を示している。これが金融システムの安定につながり、投資家心理を支えるだろう。

ハト派的側面も 景気悪化を警戒

ミラー・タバックのチーフ・マーケット・ストラテジスト、マシュー・マリー氏

FRBが0.25%の利上げ継続を発表したものの、どちらかというと(今後の引き締めに慎重な)ハト派的な言葉が目立ち、米株式相場は振り回された印象だ。小さい利上げ幅は株式市場にとってはプラスに働くことが多いが、いくつかの不安要素が相場の下げ要因となった。

株に強気な側面を挙げるとすれば、声明文で前回の「継続的な利上げが適切になる」との文言を「いくらかの追加の金融引き締めが適切になるかもしれない」と変えた部分だ。利上げに積極的な姿勢が和らぎ、市場で好意的に受け止められた。銀行の健全さが強調され、金融システム不安の最悪期が過ぎたとパウエル議長がみているのも安心感につながった。

半面、ネガティブな見方が広がったのも確かだ。まず年内の利下げはないと言い切ったこと。そしてほとんどのFRB高官が国内総生産(GDP)成長率鈍化を警戒していることだ。利上げ継続が景気を冷やす可能性が高まった。ハト派的とはいえ利上げは今後の米株市場には悪材料になると映った。

利上げ幅は想定内 金融システム不安に焦点

倉持靖彦・みずほ証券マーケットストラテジスト

22日の米株式市場では金融引き締めの継続を嫌気した売りが優勢となったようだが、FRBによる利上げ幅は市場参加者の多くの想定通りという印象で株式相場に与える影響は短期的となりそうだ。

気がかりなのは22日のイエレン米財務長官の「銀行預金の全面的な保険や保証に関することは検討も議論もしていない」という発言だ。これが同日の米株安に影響したとみている。足元の焦点は米銀の相次ぐ破綻によって生じた金融システム不安だ。この問題に関しては当面は様子見ムードが続きそうだ。

23日の東京株式市場で日経平均株価の下値メドは2万7100円近辺を想定している。外国為替市場での円高は輸出関連銘柄の重荷となるうえ、米国での金融引き締めの継続を嫌気した売りがいったん幅広い銘柄に出やすい地合いとなるだろう。

円相場の上値余地は限られる

丸山義正・SMBC日興証券チーフマーケットエコノミスト

23日の東京外国為替市場で、円相場は1ドル=130円60銭〜131円80銭近辺で推移するとみている。FOMCの結果公表後に円などの主要通貨に対してドル安が進んだのは、参加者らの23年末の政策金利見通し(ドットチャート)に変更がなかったためだろう。ただ、詳しくみると一部参加者は見通しを引き上げており、今回のドットチャートは金融引き締めに慎重な「ハト派」とは言い難い。FOMCを受けた円の上値余地は限られそうだ。

パウエルFRB議長は利上げ停止も考えたと述べたが、「とても強いコンセンサス」のもとで利上げを実施したとの発言をふまえると利上げの打ち止めが近いとみるのは時期尚早だ。パウエル氏の記者会見は落ち着いた受け答えで余裕があるようにみえ、米銀破綻を巡る金融システムへの不安はそれほど強くないとの印象を受けた。

23年末にかけては、日銀による長短金利操作(イールドカーブ・コントロール、YCC)の修正も見込まれるため、円相場は120〜124円台まで上昇するとみている。

〔NQNニューヨーク=矢内純一、川上純平、稲場三奈、日経QUICKニュース(NQN)=山田周吾、佐藤梨紗〕

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