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シリコンバレー銀行破綻、緊張続く米金融市場 地銀株安

日経新聞より引用

米国銀行の連鎖破綻のショックが世界の金融市場を揺さぶっている。米当局は預金の全額保護を打ち出したが、13日の米国株市場ではテックと関連の深い地銀株が前週末比6割安などと急落した。14日は買い戻しが入ったものの、銀行間では取引相手の信用リスクを意識する動きもあり、市場の緊張は解けていない。欧米の利上げ観測は急速に後退している。

◆テック系地銀6割安

13日の米国株市場では、中堅行や地銀株の下落が続いた。地銀全体の値動きと連動する上場投資信託(ETF)「SPDR S&P地銀ETF」は前週末比12%下げた。ファクトセットによると、米地銀約200行の合計時価総額は500億ドル(約1割)減った。

「ドミノ倒しのように何かが起きるのではという市場の不安を払拭するには、これ以上銀行が破綻しないことなど数週間はかかるだろう」(ニューヨークライフ・インベストメンツ)などの声が聞かれた。バイデン大統領が、破綻銀行の「投資家は保護されない」と念押ししたことも株価の重荷となった。

下げがきつかったのは、預金が急増したり、保険対象外の預金の割合が高かったりするなど、破綻したシリコンバレーバンク(SVB)と似た構造とみられる銀行だ。

ファースト・リパブリック・バンク株は13日に62%安となった。富裕層や不動産、テクノロジー業界との取引が深く、預金は22年末までの3年間でほぼ倍増した。JPモルガンによるとファースト・リパブリックの保護対象外の預金は7割近くある。13日の株価が3割弱下がったコメリカ銀行も保護対象外の預金割合が6割に達する。14日はファースト・リパブリック株などが買い戻されたが、市場は銀行の預金流出リスクを警戒しており、荒い値動きが続く可能性がある。

全預金保護や米連邦準備理事会(FRB)による資金供給について、ノムラ・セキュリティーズ・インターナショナルのグレッグ・ハートリッチ氏は「想定を超える預金流出があったときに、引き出し要求すべてに応えられるか投資家は問うている」とみる。

FRBが銀行に資金供給する際に政府の基金を利用する金額は最大250億ドル。預金保護の原資となる預金保険基金の残高は22年末時点で1282億ドルだ。十分に危機を抑え込む力があるか不透明感が残る。シリコンバレー銀破綻を受け、米国ではこれまでの銀行規制の是非などを巡り与野党間で論戦も起きており、影響を及ぼす可能性もある。

◆信用リスクの指標、3年ぶり高水準に

連鎖破綻への不安は、銀行間の取引市場にもあらわれてきた。取引相手の信用リスクを警戒し、金利を上乗せする動きが出ている。

取引相手の信用リスクを加味するドルの金利先渡し契約(FRA)と、政策金利に連動する無リスクの翌日物金利スワップ(OIS)の差(スプレッド)は、金融市場のストレスを示す指標として知られる。足元で急上昇し、0.5%台と20年3月のコロナショックのピーク以来の高水準に達した。

1.5%を超えていたリーマン・ショック時に比べれば低いものの、12年の欧州危機時などを上回る。市場で資金を調達できない銀行が増えるリスクが高まっている。

ドル調達にも影響が及んでいる。金融機関がユーロや円をドルに交換する際に必要な上乗せ金利(ベーシススワップ)は急上昇した。円とドルを交換する際の上乗せ金利(3カ月物)は0.6%台と、22年11月以来4カ月ぶりの高水準を付けた。

日本の金融機関は円を使ってドルを調達する場合に、日米の金利差に加えてさらに上乗せ金利を求められる。「景気見通しの改善で緩んできたドルの調達環境が、今後は逼迫した状態が続く恐れもある」(大和証券の多田出健太氏)

◆米の到達金利見通し、4.8%に低下

債券市場では金利が急変動している。13日の米国市場では政策金利の動きに敏感な2年物国債利回りが一時3.9%台前半まで急低下(価格は急上昇)した。1日の下げ幅としては1987年10月の世界同時株安「ブラックマンデー」翌日以来の大きさとなった。

銀行破綻で金融システム不安が高まり、FRBが追加利上げに慎重になるとの思惑が強まった。

金利先物市場ではFRBが21〜22日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で利上げを0.5%に再加速させる予想が消滅した。利上げの到達点も一時の5.7%程度から4.8%に下がった。

「利上げで金融当局の努力を台無しにするなら驚きだ」。米ゴールドマン・サックスのヤン・ハチウス氏は13日、利上げ停止を予想する理由をこう説明する。利上げが続けば、企業が中小地銀から資金を引き揚げる懸念が残るという。

欧州中央銀行(ECB)の大幅利上げ観測も急速に後退した。金融情報会社リフィニティブによると、16日の理事会に向けて市場が織り込む利上げ確率は13日午後時点で「0.25%」が一時6割に達し、3会合連続の「0.5%」利上げ観測は後退した。

日銀の政策修正を見込んで国債売りをしかけてきた海外勢もシナリオ修正を迫られている。

長期国債先物は13日の夜間取引で急騰し、2円の値幅制限に達したことで取引を一時中断する「サーキットブレーカー」が発動した。投機筋が慌てて、買い戻しを急いだためだ。14日の国内市場では長期金利が4カ月ぶりの低水準となる0.24%に低下した。

リーマン・ショックでは、住宅ローンなどを裏付けにした証券化商品の価値が消失した。今回、銀行の運用対象は米国債など比較的透明性が高い商品だ。SVBの破綻は個別のずさんな管理の問題で、全容が見えてくれば市場は落ち着くとの見方も多い。

(ニューヨーク=竹内弘文、ワシントン=高見浩輔、市場グループ 佐伯遼、宮本岳則)

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