個人が自身の金融取引での信用力を指数として知ることができる「信用スコア」の閲覧サービスが28日から始まる。希望者がインターネットで申請すると、200〜800点の範囲で示される。日本でなじみの薄い信用スコアの普及を通じて、消費者が多重債務に陥るケースを少しでも減らしたいという狙いがある。
信用スコアは消費者の信用情報を一元管理する国指定の信用情報機関、シー・アイ・シー(東京・新宿、CIC)が算出する。これまでも民間事業者が自社で保有する情報をもとに独自のスコアを算出する動きはあったが、国の指定機関の参入は初めてだ。
信用スコアの算出・開示を通じて、消費者に自身の信用状況への関心を高めてもらい、過剰な債務を抱えないよう促したい考えだ。
開示希望者はCICのホームページから申請する。開示方法はインターネットか郵送を選べる。
ネットの場合はクレジットカードなどで500円の手数料を支払う。本人認証の手続きを終えるとPDFで即時開示される。
郵送の場合、本人確認書類とコンビニで購入したチケットなど手数料1500円分を同封して送る。送付から10日ほどで信用スコアなどが記載された書類が届く。
CICにはクレジットカード会社や消費者金融など約800社が加盟している。個人の属性や加盟各社との契約内容、支払い状況など8億3000万件の信用情報を保有する。同社はこれら信用情報をもとに信用スコアを算出する。
年齢や職業といった属性情報は考慮せず、加盟社との契約内容や返済状況などの取引事実のみを利用する。200〜800点で信用力が高いほど数値が大きくなる。
算出理由も同時に最大4つ示すほか、スコアの分布を示した棒グラフも専用サイトで公開する。何点以上だと優良といった基準はなく、点数自体の評価もしない。
CICは現在、クレジットヒストリー(クレヒス)と呼ばれる金融機関ごとの契約内容や返済状況の情報を消費者に開示している。28日以降も継続的に提供する。
現在開示しているクレヒスは項目数や専門用語の記載が多い。消費者がクレヒスを確認しても自身の信用度を把握するのが難しく、適切な借り入れをしたり期日までに返済をしたりする動機につながりにくかった。
CICは複雑な信用情報を一目で分かるよう数値化することで自身の信用力に対する消費者の関心を高めて、多重債務のような行動の改善につなげたい考えだ。
社会的な認知度を高める狙いもある。米国では300〜850点で算出する信用スコア「FICO(ファイコ)」が普及している。融資のほか携帯電話や賃貸の契約時にも使われ、スコア次第で契約の可否や金利が変わる。
生活と密接に関わっているため、米国の人々は普段からスコアを意識して金融サービスを利用する傾向にあるという。
CICも2025年4月から消費者の信用スコアを加盟社に提供する。ファイコのように与信以外の用途利用は禁じられているが、日本でも信用スコアが一定程度の影響力を持つことになる。消費者はCICに対して加盟社への提供停止を求めることもできる。
お金を貸したり、支払いを立て替えたりするには、相手が返済などができる能力があるかを見極めることが欠かせない。
信用スコアは一目で信用状況を把握しやすい利点がある一方、米国のように将来幅広い分野で活用していくべきなのか、消費者の信用情報をどのように保護していくかといった論点もある。
(古田翔悟)