日経新聞ななめ読み

英消費者物価6.9%上昇 6月、主要国で突出

日経新聞より引用

英国で物価高と景気後退が同時進行するスタグフレーションの懸念が出ている。欧州連合(EU)離脱が招いた労働力不足による賃金と物価上昇への対応で英中銀の追加利上げ観測がやまず、英金利は2022年秋の「トラス・ショック」を超えた。米国やユーロ圏と比べた苦境が鮮明で、新たな「英国病」との見方もある。

19日に発表された英国の23年6月の消費者物価指数で価格変動が大きいエネルギーや食品などを除くコア指数の上昇率は前年同月比で6.9%上昇した。1992年3月以来、約31年ぶりの高水準だった5月の7.1%からの鈍化幅は小さかった。市場予想と比べて下落したため、いったん英国債には買いが入った。ただ米国やユーロ圏の5%前後と比べて水準が高く、今後もしつこいインフレが続くとみられる。

賃金上昇の再加速によるサービス価格の値上がりの影響が大きい。5月の平均賃金の伸び率は6.9%と伸び幅が再拡大し、1年9カ月ぶりの高水準となった。「賃金上昇は上方修正のサプライズを繰り返し、インフレ圧力の持続性が浮き彫りとなっている」と米ゴールドマン・サックスのアナリスト、イブラヒム・クアドリ氏は指摘する。

EU離脱による人手不足が労働需給の逼迫をもたらしている。22年にEU域内から英国に入った移民と離れた移民の数を引いた純移民数はマイナス5万1000人と離脱後の20年から3年連続の純減だ。新型コロナウイルス禍で早期退職が増えたことも重なった。医師や教師、鉄道や空港職員など幅広い業種でのストライキが頻発し、賃金上昇を促す労働者側の圧力が強い。英国の失業率は3%台後半と1974年以来の低水準が続いた。

英イングランド銀行(中央銀行)のベイリー総裁は10日の講演で「目下の関心事は容認できないほど高いインフレだ」と、さらなる利上げをためらわない姿勢を強調した。市場予想では政策金利を現在の5%から年末に6%と2000年以来の高水準まで引き上げる見通しだ。6月には13会合連続の利上げを実施し利上げ幅を0.5%に再拡大したにもかかわらずだ。

英債券市場では今後の連続利上げを見越した国債売りが強い。2年物国債の利回りは5月初めの3.7%から、財政不安をきっかけとした22年秋の「トラス・ショック」を超える5.5%近くまで一時上昇(価格は低下)した。08年以来15年ぶりの高水準だ。米国の4.8%やドイツの3.1%と比べて突出し、世界で独歩高となっている。

急速な金利上昇は景気後退を招きかねない。国際通貨基金(IMF)の23年の景気見通しによると、英国の23年のGDP成長率は0.3%減と主要国で最悪だ。英キャピタル・エコノミクスは英国内総生産(GDP)が23年7~9月期に0.1%減、10~12月期に0.3%減と2四半期連続のマイナス成長という「テクニカルリセッション」に陥る予測を出した。

住宅ローン金利の上昇による利払い費の増加が家計消費を押し下げる。英国は2年から5年の固定金利が大半で借り換えが発生しやすい。すでに契約者の半数に相当する約450万件の利払い費は増え、家計収入に対する利息支払額の比率は22年10~12月期の3.7%から今後は約5.5%まで高まる見通しだ。

株価もさえない。7月18日までの年初来騰落率(日本は19日まで)をみると、英国の代表的な株価指数のFTSE100は0.03%高とほぼ横ばいだった。日経平均株価(26.1%高)や欧州のストックス600(8.4%高)、米ダウ工業株30種平均(5.4%高)と世界の株式が上昇しているのとは対照的だ。

英国では1960~70年代に国民の勤労意欲の低下でストライキが頻発し、経済停滞が続いて「英国病」といわれた。現在では「欧州で最低の成長と最高の物価となり、スタグフレーションの発生で英国病が再発する可能性がある」とあるヘッジファンドの最高投資責任者(CIO)は指摘する。EU離脱の代償は大きく、混迷が続きそうだ。

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