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米国株「消去法」の1強 大手金融の2025年見通しは

日経新聞より引用

「短期的には売られすぎだ」。スイス系資産運用会社ピクテ・ジャパンの松元浩シニア・フェローはこう話す。18日、米国では米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果を受けて、ダウ工業株30種平均が前日比1100㌦安と急落した。FOMCが見込む2025年の利下げ回数が従来の4回から2回に減り、市場は「タカ派」と受け止めたためだ。

ピクテではFOMC直前に開催したグローバルの投資戦略会議で米国株を「強気」で維持すると決めた。欧州や日本など世界全体を見渡しても、経済や企業業績の堅調さで米国をしのぐ国・地域はない。いわば消去法的に「まだしばらくは米国株高が続く」と判断したのだ。

「米国株推し」は世界の投資家に共通だ。米バンク・オブ・アメリカの12月の機関投資家調査では、米国株に強気と回答した比率から弱気の比率を引いた値が36%と前月比24㌽上昇。調査開始以来の最高を記録した。

「米国株には来年も3500億ドル(約55兆円)ほどの非常に堅調な資金流入が見込まれる」。米S&P500種株価指数の25年末目標を7000と、欧米金融大手の中でも高めに据えるドイツ銀行は需給の先行きに強気だ。投資家の保有がすでに高水準だとは留保しつつ、企業業績の伸びや活発な自社株買いを支えに好環境は崩れないとみている。

S&P500は19日時点で前年末比23%上げ、このまま終えれば2年連続の2割高で主要国では群を抜く。QUICK・ファクトセットによると世界株時価総額の24年の増加額は12.3兆ドルで、うち9割弱の10.8兆ドルを米国株が占める。

世界の証券・運用大手の多くは25年の有望投資先に米国を推し、S&P500でさらに1割前後の上昇余地をみている。規制緩和など25年1月に発足するトランプ次期政権の施策や、人工知能(AI)をテコとした設備投資や生産性拡大が期待をつなぐ。「米国の例外的な強さはドルと米リスク資産を押し上げるだろう」(米JPモルガン・チェースのグローバル調査責任者、フセイン・マリク氏)

米国株の割高さは否めない。S&P500の予想PER(株価収益率、12カ月先ベース)は約22倍と、過去10年平均(18.4倍)を大きく上回る。アップル、マイクロソフトなど巨大ハイテク7社「マグニフィセント7(M7)」の影響が大きい。

米系運用会社ティー・ロウ・プライス・ジャパンの中満剛・株式運用戦略部長は「過去のレンジ上限に近いが(M7を除く)493社では20倍を切っている」と指摘する。M7についても「自己資本利益率(ROE)が高く(PERの水準には)それなりに理由がある」として、割高とは言い切れないという。

とはいえ今から上値を買い進むハードルは高まっている。過去の実績からみれば期待リターンは低下してきたとの見方がある。00年以降でみると、PER20倍超の時点から10年間のS&P500の収益率は小さかった。米国株の持ち高の評価額が高まっているなら利益確定の検討も重要になりそうだ。

グローバルな分散先として日本株に再び光が当たるかもしれない。シティグループ証券の阪上亮太・株式ストラテジストは「欧州は景気が悪く、中国には関税懸念がある。日本は良い立ち位置だと話す海外投資家が多い」と証言する。足元の東証株価指数(TOPIX)の12カ月先PERは14倍程度。米国株をさらに積み上げるハードルが高い投資家から選ばれる余地があると説明する。

プロの見通しが定まらないのが米国債だ。米連邦準備理事会(FRB)は18日の米連邦公開市場委員会(FOMC)で25年の利下げ見通しを大きく後退させた。トランプ次期米大統領の経済政策とその影響が見通せないなか、利下げ期待に踊らず米国債には中立的な姿勢をとる金融機関が目立つ。

米ステート・ストリート・グローバル・アドバイザーズは、先進国で進むインフレ緩和と利下げを背景に「国債は魅力的なリターンをもたらす」と予想する。一方、スイス運用会社UBPは「米インフレ率は25年後半に2.5〜3%に再浮上する恐れがある」とし、FRBの利下げ見通しの後退につれて米10年債利回りが5%まで高まる余地があるとみて慎重だ。

物価動向を左右するエネルギー価格は上値が限られるとの読みが大勢だ。米モルガン・スタンレーは原油について「石油輸出国機構(OPEC)と非OPEC諸国による需要を上回る供給の伸びが逆風になる」として、25年末の北海ブレント原油先物で1バレル66ドルと足元より約1割低い水準に予想した。

それでも、コモディティー(商品)には分散投資の受け皿としての期待が出ている。米ゴールドマン・サックスは「25年は米政策の潜在的な変化幅が異例に広く、コモディティーの分散的役割が強まる」と分析。金(ゴールド)は関税引き上げや米政府債務問題に、原油は地政学上の供給混乱リスクのヘッジに有効だと指摘した。

暗号資産分野の規制緩和に前向きとされるトランプ氏の大統領選勝利を受け、ビットコインは急騰して初の10万ドル台に乗せた。金と同じくキャッシュフローを生まないことから適正価格がない投資商品だが、24年は米国でビットコインの現物を対象とする上場投資信託(ETF)が承認されて投資商品としての裾野を広げている。

ブラックロックは12月12日公表のリポートで、マルチアセットのポートフォリオで1〜2%をビットコインに振り向ける余地があるとの見解を表明した。資産分散先として機関投資家の保有が広がり、25年も資産としての位置づけが高まるとの見方が多い。

「多くの強気な視線が一方向へ集まる時には注意したい」。ある外資系運用会社幹部は中国株を例に挙げ、今は見向きされていない資産やテーマにも投資機会を探るべきだと釘を刺す。「強い米国」の波には置いていかれないようにしつつ、その死角にも注意して資産構成を練る必要がありそうだ。

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