早期利下げ観測に懸念
【ベルリン=南毅郎】欧州中央銀行(ECB)は18日、政策金利を据え置いた前回2023年12月の理事会の議事要旨を公表した。早期利下げ観測を巡って「市場の期待に応じないことが重要だ」との懸念が示されていた。ECB幹部は市場の思惑を相次いでけん制しており、理事会内部で問題意識を共有していたもようだ。
ECBは12月の理事会で、政策金利を2会合連続で据え置いた。チーフエコノミストであるレーン専務理事が提案し、全会一致で決定。政策金利の一つである中銀預金金利は4.0%と、通貨ユーロが誕生して以降の最高水準を維持した。
理事会では市場の早期利下げ観測に議論が及び、市場の動きが「金融環境を過度に緩和させ、インフレ沈静の過程を阻害する恐れがある」と指摘されていた。金利の低下で利上げ効果が弱まらないよう「理事会後のコミュニケーションにおいて市場の期待に応じないことが重要」との考えを共有した。
金融引き締めの影響については融資の鈍化など「おおむね意図した通り進んでいる」との見方が示された。利上げ効果の波及を巡り、経済活動への全体的な影響は「24年の早い時期にピークを迎える」との議論もあった。
インフレ鈍化を確認するには24年春に公表する賃金統計など追加のデータが必要との意見があり、ECBは当面、粘り強く金融引き締めを続ける構えだ。次回1月25日の理事会では、3会合連続で政策金利を据え置く公算が大きい。ドイツやフランスでは待遇改善を求めるストライキが続いており、労使交渉の行方を見極めるには春ごろまで時間を要する可能性がある。
23年12月の理事会では資産圧縮の加速も決めた。新型コロナウイルス禍で導入した資産購入策の特別枠(PEPP)を巡り、再投資終了の前倒しに向けて議論。従来は少なくとも24年末までは償還があった分の再投資を続ける計画だったが、完全な再投資は24年上半期までとする方針だ。